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「不惑、後で先生が教務室だってよ」


 教室に戻るなり、漆羽がそんな朗報をくれた。全くもっていらないが。


「…さっき、ちょっと誰か殴ったんだって?」


 控え目に小声で聞いてきた漆羽に首肯すると、ほんの少し目線を落とした。


「何があったの?」

「特に。ただ、ちょっとムカついたから殴っただけだ」

「本当にそれだけ?」


 その質問に答えず、俺は席へと戻った。

 要は、まだ帰って来なかった。





「クライム、聞いてたんでしょ」


 先に二人を帰して一人だけになった屋上で要は虚空に呟いた。するとそれに答えるかのようにクライムが姿を現した。


「どうするの?伝承って言うとかなり強い連中がいるよ。キミと彼女が行くんだとしても、相当の苦戦は想像できるよ」


 腕組みして冷静に言ってくるクライムに微笑を浮かべる。


「だから、この伝承をやるのは少し後。今は、何が何でも不惑に協力してもらって戦力を強化しなきゃ」

「何にせよ、彼が手伝ってくれなきゃ話にならないけどね」

「やるよ。あいつなら、ね」


 伸びをして空を見上げる。空は相変わらずの快晴。次第に眠気に襲われる。


「期間を伸ばせたとしても、三日くらいだよ。それまでに出来るの?」

「出来るよ」


 強い肯定の言葉に思わずクライムが口をつぐむ。


「…分かったよ。ボクの力で限界まで抑え込む」

「うん。お願いね」


 そう答え、ゴロリと屋上に転がる。


「え、ここで寝るの?」

「『泥棒の昼寝』だよ。体力は温存しとかないとね」


 一度欠伸を長々とすると、目を閉じ次第に寝息が聞こえてきた。


「全く…気楽なもんだね」


 ツイと再び上空へと上がっていく。


「このこと、彼女にも伝えておかなきゃね」


 そう言うと、クライムはメンバーの一人のところへと姿を移していった。


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