第五回:尻フェチ学
尻を向ける変態学の講師達
「尻なんて、ウンコする為の場所だろうが!!」
講義室内に怒号が飛び交った。
しかし、誰一人としてその言葉に対して申し訳無さそうにはしていない。
それは、単に青日下が一人で怒ってるだけだからだ。
「ウンコする場所のどこがありがたいんだ?
くっせーだけで、そんなの単にたまらんだけだろ!!」
どうやら怒っていると言うよりも、感情の整理が出来ないようだ。
そこへゴスロリ服の暗部深夜子が言葉を返す。
「あの、講義なんですからもう少し冷静になって、
尻フェチに関する変態学の学問的視点を語ってくれませんか?」
「そんなもん!冷静でいられるか!!
尻だぞ!?し、り!!胸フェチと人気を二分する、一大ジャンルだ!」
そこへ全身をオレンジ色のタイツに身を包み、
顔を狐面で隠した巨躯の村古木助平が補足を入れる。
「まぁ、仕方ないよね。
一回の講義では語り尽くせないほど、尻フェチは奥が深い。
出しても入れても最高なんだからさ。」
暗部が驚き、ツッコみを入れる。
「出すのはまぁわかるとして、入れる!?」
するとそこへ、銀髪長身の美女、リリアーヌが言葉をかける。
「おや、暗部。入れるの方の良さ、お前ならわかるだろう。
先日お前が便秘気味だと言った時に、
勇気が無くて浣腸を入れられないお前に代わり私が
浣腸を尻に挿してやっただろう。
あの時にお前、『あぁっ!』って嬌声を上げていたじゃないか。」
どうやらそれは暗部にとっては忘れたい思い出だったようで、
思い出させられた途端に顔を真っ赤にしてしどろもどろになった。
「だ、だってアレはあまりにいきなりの事で、その、驚いたって言うか、
誰だってあんな風になっちゃいますよ、不可抗力です・・・。」
「そう、不可抗力なんだよ。
別に尻で感じる事に才能なんて必要ない。
他の外部へ露出している部位への刺激と異なり、内臓器に近い器官だ。
そこへ素人でも容易にアクセス出来てしまう手軽さ。
簡単に『ひゃうっ、やめてぇ~』だとか『リリアーヌさん、許して』と
情けなく快感に抗い切れない姿を晒す事になる凄い性感ポイントだ。」
「ちょ、リリアーヌさん!!
そのリアルに私が言ったかのような誤解を招く表現を止めて下さい!!」
「ん、覚えていないのか?お前、言っただろう?」
「う、うわぁ~、もう私、今回の講義は休むぅ~!!」
暗部は泣きわめきながら講義室を出て行ってしまった。
ポカンとする一同だったが、リリアーヌが冷静に講義を続ける。
「ま、まぁこのように、尻への刺激により感じてしまった場合、
人は自尊心を酷く傷付けられたように感じてしまう事も珍しくない。
それはそれとして、尻フェチと言うものの根本原理はやはり、
圧倒的なビジュアルだろう。」
青日下が下種な顔をしながら続ける。
「あの独特の丸みのあるフォルム、そして何よりどんなに清楚な子でも
うんこする場所って言う隠し切れない人間臭さ!!
いくら小悪魔メイクだのナチュラルメイクだのと顔を塗りたくっても、
ケツの穴まではメイク出来ねぇんだよ、女ども!!」
あまりに乱暴な物言いに、リリアーヌが反抗する。
「おい、青日下。あまり世の女性達を蔑視するような事を言うようなら、
お前を今すぐにこの場で村古木の尻に顔を埋めて縫い付けてやるぞ?」
「ヒィッ」と情けない声をあげて、青日下が後ずさった。
リリアーヌがようやく、講義らしい内容を語り始める。
「尻フェチは主に尻の弾力や柔らかさに魅力を感じるフェチズムだ。
指のように器用に動く部位では無いが、圧倒的な存在感があるな。」
そう言うとリリアーヌは何故か四つん這いになっていた村古木の背中に
ドカッと乱暴に座り込んだ。
村古木は『イイッ!!』と嬉しそうな悲鳴をあげた。
それを聞いて、更にリリアーヌがマイクを手放さずに続ける。
「このように、大きな尻に押しつぶされたいというフェチも存在する。
血管フェチのような細かい部位では無く目立つ部位であるから、
わかり易さが魅力の一つだな。服装により強調するのも手だ。
また胸フェチか尻フェチか論争が起こった際に、
年配の者ほど尻フェチの傾向が強くなるようだ。
本来の動物、猿などは尻により性的アピールをしていた。
わかり易く本能に訴えかけるものに惹かれるのだろうな。」
村古木が四つん這いになりながら苦しそうな声で尋ねる。
「尻穴フェチは、また別なのかな?」
「あぁ、尻穴フェチはどちらかと言えばにおいフェチに近かったり、
より隠された部位を開きたいと言った探求型のフェチズムだ。
尻から派生するフェチズムとしては、おならフェチや風船割り、
尻で果物等を圧し潰す等のフェチズムがあるな。」
「胸だとあまり強い圧迫感は得られないけれど、
尻なら結構な圧力がしかも胸と違って多くの人が容易に得られるね。
体の大部分を占める部位だから、その力強さが魅力だよね。」
四つん這いになりながらリリアーヌを背中に乗せながら、
苦しそうな声で村古木が言った。
更にリリアーヌが続ける。
「まぁ、あとは本能的に大きく丸い尻は健康の証であると共に
安産の象徴でもあったりするからな。
安心と本能に訴えかける魅力。尻フェチはかなり強いフェチズムだ。
ただ過剰なダイエットでその魅力を失う場合もある。
尻フェチへのアピールを失いたくない場合は、
ダイエットもほどもどに、だな。」
青日下が声を大にして、講師としては何の学びも無い言葉を叫ぶ。
「大きいお尻が、大好きです!!!!」
・・・・・・・・・・・。
青日下は言い切った感で感無量といった様子だが、講師達と講習生達は
ただ無言でそんな青日下の様子を冷ややかに見つめていた。
そこへ、暗部が講義室へと戻って来た。
「先ほどは取り乱してしまい申し訳ありませんでした。
だけどよく考えたら私、胸だけじゃなくてお尻もリリアーヌさんに
負けてますよね、正直情けないです・・・。」
「いや、案外そうでも無いぞ?
胸と違って尻はトレーニング等により理想の形に近付ける事が可能だ。
お前の小柄な体にプリッと適度なハリのある尻は、需要あると思うぞ。」
「努力で変えられるのがお尻、ですか・・・。
そう考えるとお尻フェチって、案外悪くないのかもですね?」
「あぁ。また尻フェチは、男の鍛えられた尻に魅せられる女もいる。
男女共にフェチズムの理解者がいる事も尻フェチの特徴と言えよう。」
すると、青日下と村古木がそれを聞いて目を光らせた。
かと思うと、突然講義室の壇上でズボンを脱ぎ始めた。
「うおぉぉぉ、俺の尻、見たけりゃ見せてやるよー!!」
「ホラホラホラホラ、圧倒的なデカケツに押し潰されたいんだろー?」
暴走する二人の尻を容赦なくリリアーヌのヒールが蹴り上げた。
「ぱひょ!?」
「うべらぼ~!!」
聞いた事も無いような悲鳴を上げながら二人は壇上に倒れ込んだ。
リリアーヌが説明を付け加える。
「このように、尻は獲物が大きく、またダメージも深刻になり難い為、
スパンキング等、攻撃・加虐を受ける対象としても優秀だ。
まぁ最も、度を越して傷を付けるようなのは感心せんがな。
人間は二足歩行になり椅子などに座るという文化を手に入れた。
その際の緩衝材・クッションの役割として、尻は大切だからな。
あまり乱暴に扱い、相手からの信用を損なわないようにしたいな。」
そこへ恐る恐る、村古木が質問をして来た。
「あの、尻コキはどうなんでしょう?
アレもやっぱり尻フェチの一つに入るのでしょうか・・・?」
「あぁ、なるほどな。尻の柔らかさとビジュアルを楽しみつつ、
性的快感を得られる。もしかしたら尻コキは最高の尻フェチかもな。」
そこで間髪入れず、青日下と村古木がリリアーヌに言った。
「「尻コキして下さい、お願いします!!」」
しかしそれを言い終わらないうちに、二人はリリアーヌのヒールによって
尻を蹴り上げられて、「ぐっぴぇぇ~~~!!!!」と飛び上がり、
講義室中の笑いを誘ったのだった。
こうして尻フェチ学の講義はこれまでで最も平和な形で終講を迎えた。




