第十七回:くすぐりフェチ学
くすぐりフェチイメージ図
変態ワールドカップの一回戦を勝ち抜いた日本の変態学チームは、
早速2回戦の対戦相手と引き合わされた。
暗部深夜子が掲示板を読み上げる。
「『くすぐりマニア』・・・?」
それを聞き、青日下が自らのヒゲをブチブチと引き抜きながら言う。
「クソッ、よりにもよってくすぐりフェチかよ・・・!!
そんなの、反則だろ・・・。」
リリアーヌが質問する。
「そんなに強いのか?変態として。」
「強いも何も、くすぐりなんてされたら人は抗えない。
それを早速選んで来るとは、やるな。くすぐりマニア・・・。」
更に村古木が青日下に尋ねる。
「それで、こちらはどんな変態性で対抗するの?
くすぐりフェチなんて出されたら、もうそれは決勝戦くらい、
最強のフェチじゃない?」
「まぁな、正直反則級のフェチではあるが、しかしこちらも負けない。
俺達は・・・『素数ゼミフェチ』で行こう。」
暗部が頭に疑問符を浮かべながら尋ねる。
「素数ゼミってあの、土に潜ってから素数年経過した後に成虫になり
外の世界に出て来るっていうセミよね?」
「あぁ。そんな素数ゼミに魅せられて、
日常のあらゆる事を素数ゼミのように素数でしか行えない、
そんな変態性を演じてみるつもりさ。」
「まぁ、私じゃ変態性を演じるなんて出来ないから、
アンタの好きにすれば良いけどさ。」
こうして、変態ワールドカップ二回戦が始まった。
対戦相手の『くすぐりマニア』は8人組だった。
全員が腕を8~10本程度生やしており、まるでタコやイカ、
軟体動物かと思わせる腕の多さが異常だった。
「ククク・・・さぁ、お前達の中から我々にくすぐられるのは
どいつだ?」
青日下が堂々と答える。
「このゴスロリちゃんをくれてやろう。
代わりに俺のエピソードトークを審判とお前達に聞いてもらうぜ。」
「まぁ、如何なる性癖であっても俺達には勝てないさ。
その娘がお漏らしをする前に、我々や審判を感心させてみるんだな。
まぁお前らには無理だ、ハッハッハ。」
ここでリリアーヌが青日下に聞いた。
「アイツらが言ってる、お前らには無理だ、の根拠は?」
「無い。(キッパリ)」
そう、変態ワールドカップは何でもアリの大会だ。
故に参加者達の多くは雰囲気やノリだけで話している事が多い。
「さぁ、それじゃあその娘を渡せ。
どれ・・・くすぐり易そうな細い身体をしてるじゃないか。
さーて、と。まずは・・・脇腹かな?ククク。」
相手選手の10本の手が暗部の脇腹をくすぐり始めた。
最初はソフトタッチで触れるかどうか程度、徐々に強めて行き
高速で断続的に刺激を与え続ける。
暗部は早速泣きそうな顔になりながら笑い転げた。
「アヒャヒャヒャヒャ、コレ・・・ちょ、っと待っ・・・て、
辛・・い、息・・・出来な・・・あ”!」
身体中が脱力して抵抗する力を失う。
更に呼吸さえ出来なくなり、『参った』すら言えない。
「あ”・・・が・・・あ・・・あひゃひゃひゃひゃ!!」
そのあまりに辛そうな様子を見て、リリアーヌが言う。
「おい、青日下!!さっさと変態エピソードを語れ!!
暗部はそう長くは持たんぞ!!
それに漏らさせてしまったら彼女のプライドが大きく傷付く。
さっさと始めろ!!」
その瞬間、青日下の全身に青ヒゲが生えたかのような錯覚を
周りの誰もが感じた。村古木が言う。
「青日下のヤツ、本気だ・・・。
深夜子ちゃんがあんな目に遭わされて、本気で怒ってるんだ。
それか、ただ興奮してるだけかも知れないけど。」
青日下が漫才師の口調で話し始めた。
「いやぁ~、アッシ、素数ゼミのフェチなんですよね~。
ご存知です?ホラあの、他の虫達と被らないよう、
わざと素数の年分だけ土に潜ってから地上に出て来る、
変わったヤツですよ。まぁあのセミも変態みたいなモンですよね。」
ここまでは審判も相手チームも全くの無言。
もちろんまだ話は始まったばかりで、起承転結の起の段階だ。
「それでね、アッシ、気付いたんですよ。
素数ゼミと同じように全てを素数で動けば、人と会わない、って。」
審判も相手チームも少し身を乗り出して青日下の話に耳を傾けた。
「つまりはね、例えば女子更衣室に入る時間なら、素数が良い。」
相手チームで察しの良い者が気付いたようで、ハッとした。
「監視や巡回は10分、15分、20分。
キッチリとした割り切れる綺麗な整数時間に行われる。
7分や13分なんて中途半端には始めない。
つまり、女子更衣室で好きな子のブラパッドを盗むなら、
素数の時間にサッと入り込めばバレない、いやバレにくい。」
相手チームはメモを取り始めた。
「愛の告白だって、素数回行った方が良い。
好きな子の水筒に睡眠薬を入れるのだって、7mgとか、
とにかく全てを素数にすれば上手く行くんでゲスよ。」
青日下はついに語尾まで演じ始めてしまった。
「全てを素数にする事で、あらゆる変活(変態活動)が上手く行き、
アッシはもう既にこの中で一番の変態成功者だ。
変態長者番付に載りたいクソ野郎どもは、アッシを参考にして
素数の世界に生きてみればきっと上手く行くでゲスよ。」
・・・・・・・。
審判は涙を流しながら拍手をした。
何か言おうとしたが、感動のあまり言葉が出ないようだった。
こうして勝者は日本の変態学チームになった。
そしてリリアーヌがすぐに暗部の元へと駆け寄った。
「暗部!!大丈夫だったか!?」
「あ、リリアーヌ・・・さん・・・ヒュー、・・ヒュー。
えっと、あ、ヒュー、何、とか・・・生きて・・・
スゥ~・・・ます・・・フヒュー・・・。」
とにかく酸欠状態のようで、息を吸いまくっている。
リリアーヌは少し泣きそうな顔をして、暗部を抱きしめた。
「よく頑張ったな!!
しかし、漏らさないで済んで本当に良かった!!!!」
しかし、そこで暗部がリリアーヌに耳打ちをした。
「あの・・・実は結構漏れちゃいました・・・。
トイレに行きたいけど今行ったら絶対バレちゃうから、
後でこっそり行きますね。」
「暗部、お前・・・!!
あぁ、わかった。気持ち悪いだろうから、なるべく早めにな。」
「ありがとうございます。
まぁ、勝てて良かったですよ。
だけど、優勝までの道のりはあと何回勝たなければいけないのか、
その度にこんな目に遭っていたら・・・体が持ちません。」
疲れ切った暗部を抱きしめながら、リリアーヌが言った。
「おい、青日下。本当にこの大会を勝ち進む意味はあるのか?
何せ変態揃いの大会だ。私達の体の限界までを試して来るだろう。
仲間をそこまでの危険に晒してまで、勝ち得たいものなのか?」
「・・・・・・・・。」
青日下は答えなかった。
何せ彼には特に何の崇高なビジョンも無い。
単に物凄い数の参加者の中で優勝出来たら凄いから、
出場理由なんてその程度のものだった。
更に村古木は息も絶え絶えな暗部の姿を見て言った。
「わぁ~、呼吸困難な深夜子ちゃん尊い!!
何なら窒息プレイもしちゃいたいな~☆」
リリアーヌは二人を見ながら疑問符が湧いて来た。
ここまでの犠牲を払ってまで、勝ち上がった先には何があるのか。
そしてそれに固着する青日下には何の信念も無い。
こんな大会なら止めて欲しい、いや、止めろ。
そして彼女の中からドSの本性が姿を現した。
リリアーヌの目つきが一瞬で冷たく恐ろしいものへと変わる。
「おい、誰でも良いから私をこの会場で一番目立つ位置に連れて行け。
説教してやる、全ての変態どもに。終わらせてやる、私の力で。」
リリアーヌは完全にブチ切れていた。
そして彼女はゆっくりとこの会場でもっと大きな壇上へと上がった。
「貴様ら全員、私がブチ〇してやるよ。」
冷たくそう言い放った時、会場中がシン・・・と静まり返った。
先程までの喧騒が嘘のようである。
そこへゆっくりと歩み寄って来た男。
彼はこの大会の主催者『ヘンタイン』だった。
「ほぅ、この大会を終わらせろと?
だったら、最高の変態を見せてくれ。
そしたらこの大会を終わらせる事を考えてやるよ。」




