第十六回:変態ワールドカップ出場
変態ワールドカップに出場する4人
その日、変態学の講師控え室に『ある封筒』が届いていた。
それを見て青日下は「今年もこの季節が来たか」と言った。
そしてその封筒には『変態ワールドカップ委員会』と書かれていた。
暗部が青日下に質問した。
「それ、何?
ワールドカップって、サッカー試合の招待状かしら?」
「ハハ、まさか。コレは『変態ワールドカップ』の招待状さ。
そう言えば深夜子ちゃんが入ってからはまだ参加してないよね。」
「変態ワールドカップ・・・一体何をする集まりなの!?」
「うん、世の中にはさ、お金を使い切れないくらい持っているのに
あらゆる事をやり尽くしてしまって何にも興奮出来ない人がいる。
そしてそういう人達が新たな興奮を得られるように、世界中から
変態達を集めて競わせる。それが変態ワールドカップさ。」
「へ、へぇ・・・。
なるほどね、私には縁が無さそうな大会だわ。
行くなら、アンタと村古木で言って来なさいよ。」
「だけどね、ここで優勝・・・まではしなくても、
ベスト8とか・・・ベスト4くらいまで残れたら、
国は助成金を出すと思うよ。名実ともに変態大国だ。」
「それって、どれくらいの国が参加するのよ?」
「承認されていなかったり、自称とかもあるから、
まぁザッと5000くらいかな。」
「5000・・・!!
って、国の数って200くらいでしょ!?
どんだけ自称が多いのよ!!」
「まぁそれだけ、自分の変態性に自信があって
国では無く自分達の団体が賞金を得たいんだろうね。」
「賞金・・・一体優勝したらどれくらい貰えるの?」
「1兆さ。スポンサー、主催は世界の大富豪達だからね。
表世界には決して姿を現さない真の世界の支配者達が、
世界で一番興奮出来る変態を探し求めているんだよ。」
「何だか、物凄過ぎて理解が出来ないわ・・・。
そもそも、どうやって技?か何かを競うのよ・・・。」
そこへ、村古木とリリアーヌがやって来た。
「私が話そう。変態ワールドカップ、HWCはトーナメント制だ。
それぞれのチームから一人が名乗りを挙げて1:1で戦う。
そしてそこで取られる戦闘スタイルは『妄想式』と呼ばれる。」
「妄想式!?全くどんなものか想像が付かないわ・・・。」
ここで村古木が説明役を代わる。
「それぞれに『こんな性癖あったらキモい』っていう性癖を設定し、
それについての具体的なエピソードを語るんだ。
よりアブノーマルだったり、キモかった方が勝ちさ。」
「何てルールなのよ・・・。
それって、審判はもしかして?」
再び説明役が青日下に戻り、説明を続ける。
「あぁ、スポンサーであり主催者でもある、影の支配者達だ。
彼らの多数決?あみだくじ?仕組みはよくわからないけれど、
とにかく彼らがより変態だと思った方が勝ちとなる。」
(何だかもうめちゃくちゃね・・・。
だけど、変態学に国からの補助金が出るのなら私も
変態学の講師を辞められる・・・。
ここは協力して、何としてでも優勝を目指さないと。)
「さ、そうと決まれば村古木のおならジェットで飛んで行くぞ。
浮き輪にダウンコート、虫刺され薬にコンドームは持ったか?
さぁ、行くぞ!!」
「え、ちょちょちょちょちょ、いきなり過ぎでしょ!!
いやいやいやいやいやいや、無理無理無理無理無理無理!!
何の用意もしてないってばーーーーーー!!!!!!」
しかし暗部の言葉を聞かず、村古木は屁をコき始めた。
そしていつの間にか彼の体に巻かれていた縄に3人がしがみ付くと、
村古木の屁は物凄い量となりやがては宙に浮き始めた。
そして村古木がひと際大きく屁を放ると、一気にジェット噴射になった。
「え”え”ええぇぇぇぇぇっぇ!!!????」
こうして空の旅を楽しむ・・・いや、味あわされる事約3時間。
そろそろ腕が疲れてもう縄を外しそうになった時、ようやく島が見えた。
青日下が言う。
「あ、あそこだぞ!!
よし、一気に乗り込むぞ!!
前傾姿勢になり、極力ダメージを最小限にするんだ!!」
そして地面に近付くに連れて速度が増して行き、どうやら村古木自身、
スピードを制御出来なくなっているようだった。
最後に海岸沿いの砂浜の上を『ズシャアーーー』と滑った。
「・・・よし、全員何とか無事、か。」
「うぇえぇえ~。口の中に砂が入った~・・・。」
「ふん、久しぶりに来てみたが、やはり暑かったり寒かったり、
極端な土地だな。」
青日下、暗部、リリアーヌは建物のある方へと向けて歩こうとした。
その時、後ろでむぐむぐと言う籠った声が聞こえた。
青日下が言った。
「しまった!!
村古木が着地時の衝撃で砂浜に顔が埋まったままだ!!」
3人で必死に村古木を砂浜に埋まった顔ごとひっぱり上げる。
何とかズボッと抜けた時、村古木の顔は真っ青だった。
「ヒュー・・・ヒュー・・・。
いやさすがに今回は死ぬかと思ったよー。
コヒュー、・・・コヒュー。」
「いやいや、すまん。大会の事で頭がいっぱいだったよ。
あ、いっぱいの”い”を”お”に変える遊び、やるか?」
しかし、村古木にはそれに応える余裕が無かった。
そもそも答えた所であまり良い事は無いように思えた。
「あちらの方からたくさんの声が聞こえるわね。
あちらが正門かしら?」
「あぁ、あちらが肛門だ(これは華麗にスルーされた)
日本は特に変態大国として有名だから、注目されるかもね。
いきなりケツに何かモノを入れられないよう、常に尻に手を添えて。」
「えー、何かそれダサ過ぎるんだけど・・・ってか、
どんだけ治安悪いのよ・・・。」
その時4人の前に執事風のサッカー選手が現れた。
『あ、どうも。私執事で羊の棺です。
よろしくお願いします。』
それに、一応日本の代表としての責任感から青日下が答える。
「あ、どうも。日本から来ました、変態学ゼミです。」
『ありゃ?ちゃんと迎えのプライベートジェットを用意すると
封筒の中の便せんに書いておいたのですが・・・』
「えぇ~~~、そうだったの!?
たかがゼミの活動に予算を使いたくないから、
屁リコプター方式でここまで飛んで来ちゃったよ。」
『やっぱり、日本の方々はちょっとレベルが違いますね・・・。
それでは機械式抽選による試合決定まで、
その辺をアホみたいにウロウロして下さいね。』
羊の棺からそう言われて、4人は周辺を見渡した。
その辺りのそこかしこで脱糞する者、他人のカバンの中にうんこする者、
まさに地獄絵図がそこにはあった。
暗部が何気ない質問を青日下にぶつけた。
「ねー、そもそも日本って、何位まで行った事があるの?」
それに青日下がニヤ~っとしたねちっこい顔で応える。
「そうですねぇ・・・過去には1位の経験もあるとか。
だから、そこから付いたあだ名が変態大国で、他国も恐れているとか。」
「そんな変態のサラブレッドみたいな国だったのね・・・。
まぁでも過去に1位を取った事があるのなら、不可能では無い・・・。
少しだけ希望が湧いて来たわよ。」
そうしていると、日本の初戦の対戦相手が電光掲示板に表示された。
「日本 VS ポヒョヒョミ帝国、Fight!!」
「・・・・・・。」
当然、見た事も聞いた事も無い国だった。
と言うより、この時代に帝国を名乗っているのもよくわからない。
顔に腰蓑を巻いて下半身は丸裸になっている部族達だった。
彼らはたった一言を発した。
「・・・・・・・・ルールガ、ヨクワカラナイ。」
試合の方法を熟知していなかったようで、
ポヒョヒョミ帝国は初戦敗退となった。
こうして記念すべき第一回目の試合はワケのわからない間に
不戦勝で勝ち上がってしまったのだった。




