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誰も知らないスタート地点 ~未踏の遺跡から始まる気ままなVRMMO探索記~  作者: モーリス


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6/7

名前のない現象

遺跡の通路に戻されたサクは、先ほどまで確かに存在していたはずの異様な空間の感覚だけがわずかに残っているような違和感を覚えながらも、目の前に広がる現実的な石造りの回廊と青白い結晶の灯りを見ているうちに、それが一種の特殊イベントか何かだったのではないかという軽い認識へと整理してしまっており、しかし視界の端に残っている見慣れないシステムログだけが、確かに“何かが起きた”という事実を静かに主張していた。


「一瞬だけ別マップに飛ばされた感じだったな……」


 サクはそう呟きながらも足を止めることはなく、むしろ先ほどの現象を新しいギミックの一種として捉えたまま、遺跡の奥へと続く通路を再び観察しながら歩みを進めていた。



 一方その頃、この世界の外側では、すでにそれが“ただのイベントではない”という認識が急速に広がり始めていた。



【World Anomaly Online】総合掲示板スレ Part.128


1:名無しの冒険者

観測施設のワールドアナウンスまた来たんだが


2:名無しの冒険者

あれマジで何なんだよ

運営説明しろ


3:名無しの冒険者

対象不明・起動者不明って初めて見たわ


4:名無しの冒険者

普通こういうのって名前出るよな?


5:名無しの冒険者

それが出てないのが一番怖い


6:名無しの冒険者

バグならここまで長引かんだろ


7:名無しの冒険者

いやでもこれ何回目だよ

もう3回以上見てるぞこのアナウンス


8:名無しの冒険者

毎回内容違うのが不気味すぎる


9:名無しの冒険者

「観測」「領域」「未登録」

聞いたことない単語ばっかなんだけど


10:名無しの冒険者

攻略班もお手上げらしいな


11:名無しの冒険者

というかデータベースに無いってどういうことだよ


12:名無しの解析勢

ログ解析してるけど

“未登録領域”ってそもそも内部に存在してない


13:名無しの冒険者

存在しないって何?


14:名無しの解析勢

地図データにもサーバー構造にも無い

でもそこからアクセスログは出てる


15:名無しの冒険者

怖すぎて草


16:名無しの冒険者

草じゃねえわ



17:名無しの冒険者

なあ地下遺跡スタート勢って関係ある?


18:名無しの冒険者

またそれか


19:名無しの冒険者

でもさ

あいつら明らかに普通のプレイヤーと違う動きしてるらしいぞ


20:名無しの冒険者

「ボスと会話してたやつ」とか呼ばれてるの草


21:名無しの冒険者

草じゃねえって言ってるだろ


22:名無しの冒険者

いやでもそのへん怪しいんだよな

ログ的に“異常発生地点”と近いらしい


23:名無しの解析勢

一応言うけど

観測ログの座標群と地下遺跡系の発生位置はかなり近い


24:名無しの冒険者

え?


25:名無しの解析勢

ただし一致はしてない

“ずれてる”


26:名無しの冒険者

それ余計怖いんだが



27:名無しの冒険者

結局これ誰がやってんの?


28:名無しの冒険者

プレイヤーじゃないなら運営だろ


29:名無しの冒険者

運営にしては説明なさすぎる


30:名無しの冒険者

いやもうこれさ


31:名無しの冒険者

“誰がやってるか分からない現象”になってる時点で終わってる


32:名無しの冒険者

その言い方やめろ



 掲示板が異様な速度で加速していく一方で、遺跡の中ではサクが変わらない調子で石柱の構造を眺めたり、壊れた装置のようなものを軽く触って反応を確かめたりしながら、あくまで“探索ゲームとしての楽しみ方”を崩さずに進んでおり、その認識と世界側の騒ぎとの間には決定的な隔たりが生まれつつあった。



 やがて遺跡の構造が再び変化し始め、これまでの一本道のような通路ではなく、明らかに人為的な意図を持った分岐と整備された階層構造が現れ始めると同時に、壁面の結晶は一定の周期で明滅を繰り返しながら、まるで何かの“活動範囲”を示しているかのように配置を変えていた。


「ここ、やっぱり途中から誰か作り変えてる感じするな……」


 サクはそう呟くが、恐怖ではなく純粋な興味として受け取っており、そのまま階段のように続く下層へと足を向ける。



 その瞬間、視界に新しい通知が浮かぶ。


【World System Notice】


観測ログの蓄積が閾値を超過しました


対象:未登録干渉因子


影響範囲:局所領域から拡張中



「またこれか」


 サクは軽く流すようにその通知を閉じる。


 だがその裏で、世界は静かに変質を始めていた。


 “誰かが起こしている現象”ではなく、“誰かが起きている現象”へと。



 そしてその中心にいる存在だけが、まだそれをただの寄り道の延長として歩き続けていた。

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