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前世で笑われた解体師の俺、1000年後に転生したら素材知識が世界唯一の宝になっていた件  作者: いなばの青兎


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第13話 協力者の痕跡

 文書館の四日目。


 残り九冊を開く前に、ガルダが前日のページの推定結果を持ってきた。


 「切り取られた部分の前後から推定しました。完全ではありませんが」


 俺はガルダの手書きメモを受け取った。


 「前後の文脈から見て、切り取られた部分には「採集した核を一か所に集積する手順」と「同調の引き金となる条件」が書かれていたと思われます。具体的な数値や方法が書かれていたはずです」


 「その部分だけが切られた」


 「核心の手順書だけを消した。残りは残した。なぜか——」


 「完全に消すと、記録帳の存在自体が怪しまれる」とエリカが言った。「一部残しておけば、「ただの解体記録」に見える」


 「その通りです」とガルダが言った。「情報操作として精巧です。誰かが意図的に設計した」


* * *


 十五冊目に、名前が出てきた。


 「カーラ」という名前だった。


 「カーラと共に、今日の採集を実施した」


 前世のルドの筆跡ではあるが、いつもと少し違う書き方だった。誰かの名前を書くとき、ルドは少し丁寧になる癖があったのかもしれない。


 「カーラ」とエリカが繰り返した。「誰ですか」


 「分かりません。前世の記憶に、その名前がありません」


 「会ったことがない?」


 「……会っていたかもしれませんが、思い出せない。前世の記憶は完全ではありません。解体に関わる記憶は詳細ですが、人間関係の記憶は薄い」


 「薄い」


 「俺は人と話すのが、前世でも苦手だった気がします」


 エリカが少し笑った。


 「今もそうですよ」


 「……そうですね」


 ガルダがメモを取りながら言った。


 「カーラという人物が記録帳に登場するなら、他の冊にも出てくるかもしれません。確認しましょう」


* * *


 十六冊目、十七冊目、十八冊目——カーラの名前が続いた。


 「カーラが新しい旧種を確認。採集に同行する」


 「カーラの指摘で、核の文様に周期性があることが判明。千年単位のサイクルがある可能性」


 「千年サイクル」と俺は声に出した。


 「カーラという人物が、千年サイクルに気づいていた」とガルダが書き留めた。


 「……カーラは、俺より詳しかった」


 前世のルドの記録帳でありながら、カーラという存在がルドより核心に近いことを知っていた。


 「カーラは誰だったんだ」


 十九冊目に、答えの断片があった。


 「カーラは今日で採集を終えると言った。「記録は全部任せる。あとは実行だけだ」と言い残して去った。何を実行するのか——俺には分からなかった」


 「実行」とエリカが言った。「大消失を引き起こすことですか」


 「カーラが主導していた」と俺は言った。「ルドは採集と記録を担当した。カーラが理論を作り、実行した」


 「カーラは何者ですか」


 「分かりません。この記録帳に、カーラの素性は書いていない。ただ——」


 二十冊目を開いた。


 ページが全部残っていた。切り取られていない。


 そして、こう書いてあった。


 「カーラが大消失を引き起こした。俺が採集した核を使って。あの夜、空が赤くなって、全ての魔物が地中に消えた。カーラは言っていた。「千年後にまた来る。お前が行くべきだ。記録帳を全部持っていけ」」


 「……カーラが俺に、転生しろと言った」


 声が出ていた。


 エリカもガルダも静かにしていた。


 「でも俺は、転生したのは女神の判断だと思っていました」


 「女神とカーラが別々の存在とは限りません」とガルダが言った。「あるいは、カーラが「記録の女神」という存在だったか」


 「……そうかもしれない」


 俺は二十冊目を最後まで読んだ。


 最後のページに、こう書いてあった。


 「千年後、俺が転生したときにこれを読む。カーラはそう言っていた。だから俺は全部書いた。素材を無駄にするな。命を無駄にするな。——そして、千年後の俺へ: 記録帳は散らばることになる。でも全部見つかる。それも計算のうちだと、カーラは言っていた」


 「散らばることも計算のうち」とエリカが言った。


 「記録帳が散らばったのは、情報を消しにきた誰かのせいだと思っていました。でも——カーラが最初から想定していた」


 「情報を消そうとした者も含めて、計算のうちだった」とガルダが静かに言った。


 俺は二十冊目を閉じた。


 「カーラは何を計算していたんだ」


 残り三冊に、その答えがある。

ブクマや評価をいただけると、続きの執筆がすごく捗ります。

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