第6話
ノアとベラの二人は遮蔽の裏から射撃を開始する。
ベラの持つ銃は以前依頼の報酬でもらった軍用高性能アサルトライフル。
対してノアの持つ銃はマーケット産のスナイパーライフルとサブマシンガン、基本的にベラの援護をしている。
二人がまず三体ほど殲滅するも、他の人形から発砲を受ける。慌てて遮蔽に隠れると、ベラが何かに気づき、敵の銃弾を拾いノアに見せる。
「ん? どうしたのベラ?」
「……」
「銃弾? ……これ、私たちの使ってるのより高いやつじゃん!」
「……」
ベラがノアの言葉を聞き、肯定するように頷く。
「人形が私たちよりいい装備使ってるとか信じられないんだけど! ちょっと隊長!」
完全に油断していた隊長は急に声を掛けられ慌てる。
『ど、どうしたのノア?』
「私たちの装備、もう少しよくしてよ!」
『……ま、まぁ、そのうちね。そのうち』
都合の悪いことを聞かれた隊長は、分かりやすく動揺し、適当に返事をする。それを聞いたノアは肩を落とす。
「こうなったら、あの人形ども全部壊して銃弾回収してやる! いくよ、相棒!」
「……!」
やる気になった二人は本格的に攻撃を開始する。ベラが遮蔽から飛び出し人形の狙いをそらす。ベラに銃弾が殺到するが彼女はそれを全て避ける。
タンッと音がすると、人形の頭パーツが吹き飛び真横に倒れる。
ベラに狙いが向いている隙にノアが無防備になった人形を撃ち抜いている。
ベラが移動しながら人形を撃ちまくると、動く人形の数は半分ほどに減る。
「……!」
「うっそ、煙幕!」
数が減り、追い込まれていることを理解した人形は各々煙幕を炊き始める。
「馬鹿なの、こいつら。そんなことしても一方的に撃たれるだけなのに」
ノアとベラの義体にはサーマルスコープが搭載されている。対して、使い捨ての量産型人形にはサーマルスコープが搭載されていることなど基本ない。
よって、この煙幕は人形にとって致命的な悪手、となるはずだった。
「ちょ、うそ!?」
しかし、予想に反して人形たちは煙幕の中からノアとベラの位置を正確に撃ち抜いてくる。
つまり、この人形たちの銃にはサーマルスコープが搭載されているということだ。
これには操縦室から映像を見ていた隊長も驚きを隠せない。
『うそでしょ!? サーマルスコープ搭載の人形なんか見たことないわよ!』
「隊長! なんかおかしいよ!」
『ノア、ベラ、箱はいいから、人形を殲滅次第速やかに撤退しなさい!』
「ラジャー! 相棒、合わせて!」
「……」
ベラは人形たちの中に飛び、一気に人形をスクラップにしていく。
「……!」
無茶な戦い方のせいでベラは右肩を負傷する。
とはいえ、第二世代と量産型の人形では単純なスペック差もあり一方的な戦いとなる。
数分で全ての人形を廃棄処分にすると、普段なら行う弾薬回収もしないまま、工場の外へと駆け出す。
来た道をそのまま戻ろうと先に行ったベラの足音が止まる。ベラに追いついたノアは、彼女に叫ぶ。
「なにしてるの、相棒!? 早く脱出しなきゃ!」
「……」
ノアの言葉には反応せず、ベラは正面の暗い廊下の先を見ながら武器を構える。普段とは異なるベラの様子にノアも足を止める。
そしてベラが武器を構える方を見ると、目で認識する前に音が聞こえた。
コツン、コツン、金属でできている廊下に音が反響している、継続的に同じ間隔で。まるで、足音のように。
『二人とも、別の脱出ルートを探すから、だから』
「もう遅いよ、隊長。逃げられない」
「……」
そう言い終えるとノアもベラ同様に銃を構える。それとほぼ同時に、廊下の先にいた何かが姿を見せる。
二人の方に向かってゆったりと歩いてくるのは、メイド型機械人形のようにメイド服を着た女性。だが、この女性は人形ではない。
しかし、普通の人間でもない。おそらくは…義体。
「あらあら、これはまた熱烈な歓迎でございますね。そうは思いません?」




