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ついに始まる因縁の戦い

 シェイドが作ってくれたダンジョンの入り口を通り、襲撃犯がいるという街の中央にやってきた。


 とはいえいきなり突撃するようなことは、さすがのエリーもしていない。

 まずは街の各所にあるギルドの隠れ家のひとつにやってきた。


 この部屋は広場に面した建物の二階にあるため、窓から広場の様子が確認できるんだ。


 襲撃者たちは中央の広場にいるようだった。

 普段は様々な人が行き交って賑わう場所なのだが、今は物々しい雰囲気に包まれていた。

 それなりの広さがあるから、ここでなら戦闘もできないことはない。


 情報の通り十数人の冒険者と、数十人にもなる街の兵士が集まっている。

 信じられなかったが、本当に裏切ったのだろうか。


「しかしそれにしては何か様子がおかしいが」


 どうにも静かすぎるというか……。

 皆が大人しく広場で待っているというのには違和感がある。


 街の門を破って突入してくるような連中だ。

 性格も荒っぽいだろう。

 それがまるで一言も発さずに、人形のようにその場に立ち尽くしている。


 よく訓練された軍隊か、そうでなければ、まるで操られているような……。


 やがて一羽の黒い鳥が窓から部屋に入ってきて、褐色肌の少女パンドラになった。


「ボスっぽいやつは真ん中でふんぞり返って座ってたゾ」


 さっそく双眼鏡で様子を確認する。

 ギルドの備品をガドーさんから借りてきたものだ。


 様子を確認し、俺は驚く。


「あの女……シャルロットか?」


 以前に滞在していた街でエリーに突っかかってきたやつだ。

 かなり高レベルの魔法使いで、エリーの次に強いのではとも言われていた。


 そしてシャルロットは、エリーが勇者の力を失ったことを知っている。


「ふうん。なるほど。そういうことね」


 エリーが口元を邪悪に歪ませた。

 二人は仲が悪かったからなあ。


 それにしてもシャルロットはなんでエリーを狙っているのだろう。

 単に復讐のためだけにここまでするか?


 それに、エリーが勇者の資格を失っていることを知っていながら、仲間も集めている。

 聖剣を取り戻したことをどこかで知ったのだろうか。

 だから戦力を集めた。

 筋は通っている気がする。


 だけど、何かがおかしい。

 何かを見落としている。

 そんな気がする。


「考えてもわからないことは考えるだけ無駄よ。とにかくあのクソ忌々しいシャルロットをぶっ殺せばいいんでしょう!」


 エリーがそういうや否や、窓から広場へと飛び出した。


「──……あれはっ」

「来たぞ、エリーだ! やつは勇者の力を失っているはず! 今なら俺たちでも……」


 冒険者の誰かが叫び、戦闘態勢を取る。

 だけど、その時にはもう戦いは終わっていた。


「<神器喚装>聖剣エクスカリバー」


 空中で両手に二本の聖剣を生み出す。


 その輝きは見る者に本能的な畏怖をもたらす。

 それはまごうことなき女神の輝きであり、エリーが手にした瞬間、恐怖の対象へと変わる。


 人智を超えた神聖武器を、広場の中央に陣取っていたシャルロット目掛けて投げつけた!


「死ねやオラアアアアアアアッッ!!!」


 上昇したスータスの力と、<投擲>スキルによる威力加算。そして聖剣自体の攻撃力。

 全てが合わさった攻撃は並の人間に防げるものではない。


「「「ぎゃあああああああああっ!!!!」」


 先手必勝、一撃必殺。

 集まっていた冒険者たちはまとめて吹き飛ばされた。


 エリーは戦闘狂に見えるが、実は戦闘を楽しむという考えはない。

 戦闘を楽しむのではなく、一方的な蹂躙を楽しむのだ。


 だから戦いも一瞬で終わらせる。

 圧倒的な力で勝つのが好きなのであり、その過程には興味ないからな。


 死屍累々と横たわる敵と、その中央で一人立つエリー。

 それこそがエリーの求める光景だ。


 しかも今の上昇したステータスの力で今は5本まで聖剣を生み出せる。

 惜しげもなく放たれる聖剣の連続投擲に、取り巻きはあっという間に全滅した。


 うん。

 俺の出る幕はひとつもなかったな。


「あいつは本当に人間なのか」


「エリーの方がオイラよりもよっぽどモンスターだナ」


 一緒にいたシェイドとパンドラも呆れていた。

 モンスターにもどん引きされる元勇者っていったい……。


 エリーは地面に降り立つと、魔力補給ポーションを一気飲みして魔力を回復する。

 そうして、広場の中央でただ一人立っている女魔法使いへと目を向けた。


 生み出した聖剣の切っ先を突きつけながら、邪悪に笑う。


「久しぶりね。わざわざ呼び出してくれるなんて光栄だわ。えーと、名前はなんだったっけ。アタシ雑魚の名前まではいちいち覚えていないのよ」


 シャルロットもにっこりと笑顔で返す。


「こんにちは元光の勇者様。えっと、今のご職業はなんでしたっけ? 私も思い出せないので教えてくださらないかしら」


「ならその軽い頭を殴って思い出させてあげるわ」


「いかにも奴隷らしい低俗な発想ですわね」


「死ね!!」


 目の前で向かい合う至近距離にも関わらず聖剣を投げつけた。

 と同時に自らの手に新たな聖剣を生み出して、シャルロットに向けて切り掛かる!


 投擲と斬撃による一人時間差の攻撃。

 並の戦士なら最初の投擲でも死んでいるだろう。


 エリーは性格はあれだが、戦闘のセンスだけは天才だ。

 そのエリーが手加減なしに攻撃した。

 今のシャルロットにはそれだけの脅威を感じているということだろう。


 そしてその予感は当たっていたようだった。

 シャルロットは投擲された聖剣を手にした杖で弾き、さらには追撃の斬撃をも後ろに下がってあっさりと回避した。


 その身軽な動きにエリーも感心したようだった。


「へえ。アタシにケンカを売るだけあって、ちょっとはやるじゃない」


「あらあら、エリーさんが他人を褒めるなんて、珍しいこともあるのですね」


 シャルロットが余裕の笑みを浮かべる。

 今のエリーの攻撃で倒せないとなると、シャルロットは俺が知っていた頃よりもかなり強くなっている。


 正直、エリーが1人で全部終わらせるのでは、と思っていたのだが。

 そう簡単にはいかないみたいだな。

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― 新着の感想 ―
[一言] シャルロットも色々苦汁をなめてきただけあって一筋縄では行かなそうですね。
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