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このアタシにケンカを売るなんていい度胸ね

「門が何者かに突破された?」


 ガドーさんからの知らせを聞いて俺は驚いた。

 この街の門は普通の街よりもかなり警備が厳重だ。さらには戦争が起こるかもしれないため、普段以上に強化されている。

 それがいとも簡単に突破されたのだから、驚くのも当然だろう。


 ガドーさんが厳しい顔つきをさらに厳しくさせる。


「門番は全滅。周辺から応援が行ったんだが、それも返り討ちにあったらしい」


「それは相当な手練れですね。だけどそれより問題なのは……」


「そうだ。街で騒ぎを起こすことにためらいがないってことだ」


「ですよね」


 普通、正面から門を突破したりなんかしない。

 そんなことをしたら自分が攻めてきたと宣伝するだけだ。

 すぐに追っ手もかかるだろうし、実際今の俺たちのようにすぐに情報も入ってくる。


 多分これからすぐにギルドで緊急クエストも発令されるだろう。

 賞金目当てに集まってきた冒険者を相手にすることになる。

 いいことなんてひとつもない。


 エリーは実際に門番を倒して突破しようとしたが、それはエリーの頭の中がエリーだからだ。

 なのに実際にそれをやってしまったやつが現れたという。

 端的に言えばエリーがもう1人街にやってきたようなものだ。

 しかも俺という手綱なし。


「まったく頭が痛いよ……」


 ガドーさんが疲れた表情を見せる。

 これはまた胃にもうひとつ穴が空いたな。

 気持ちはわかる。


「帝国が攻めてきた、って感じではなさそうですね」


 もしそうなら街に入られた時点で終わりだ。

 今頃街は火の海となっているだろう。

 そうなっていないということは、この街を攻めることが目的ではないということだ。


「一体何が目的なんでしょう」


「まだわからない。門を破ったというのもつい先ほどのことらしいからな」


 そのとき、廊下を走る音がして部屋の扉が開いた。

 伝令に来た男性が息を切らせながら告げる。


「ガドーさん、侵入者が要求を告げてきました!」


「ついにきたか。それで、なんと言っている」


「それが……」


 伝令の男性が一瞬言葉を切り、俺たちの方に気まずそうな視線を向けた。 


「どうやら、エリー=クローゼナイツを連れてこい、と要求しているようです」


 ガドーさんがさらに疲れたようにため息をついた。


「またエリーが原因か……」


「エリー今度はなにをしたんだ」


「失礼ね。まだ何もしてないわよ」


 エリーが怒ったようにそういう。

 だけどのその顔は好戦的な笑みに彩られていた。


「心当たりなんて多すぎてわからないわ。アタシって可愛すぎて強すぎるから、すぐ逆恨みされるのよね」


 やれやれ、と言わんばかりの態度のエリー。

 でも、可愛くて強いのはその通りだが、エリーがらみの事件はほとんどが逆恨みではなく、正当な報復なんじゃないだろうか。


「ま、理由なんてなんでもいいじゃない。行って本人に聞けばいいんだし」


「それはそうだが……」


 相手はエリーのことを知っている。

 その強さも知っているはずだ。

 普通に考えれば勝ち目なんてない。

 にも関わらず勝負を挑み、しかも街の中央で待ち構えているということは、正面から堂々と戦うということだ。


 そんなこと普通に考えてありえない。

 相手はよっぽどの命知らずか、そうでなければ、勝ち目があると考えているということだ。


 門を破って正面から堂々と侵入してきたのも、逆に注目を浴びるからエリーを見つけやすいという計算なのだとしたら。


「相手は誰なのかわかりませんか?」


「ついさっき入ってきたばかりの情報だから、まだ未確認な部分も多い。相手も一人じゃなくて複数と言われているし、兵士の姿もあるから内部に裏切り者がいたんじゃないかという話もある」


「できればもっと情報が欲しいですね」


 特に、エリーに勝負を挑むとかいう無謀を行う自身の根拠が知りたい。

 まともな方法では勝てるはずがないことくらい相手もわかっているはずなんだが。


 相手はエリーが来るように要求しているとのことだったが、それ以外はまだ何も言ってきていないらしい。

 なら律儀にすぐに向かってやる必要もない。

 ここでもう少し時間を稼いでも問題ないはずだ。


 その間に少しでも相手のことを調べておきたい。

 それとも、光の勇者であるエリーを狙うということは、やはり帝国側の刺客なんだろうか。


 そう考えていたのだが……。


「なんで待たないといけないの。さっさと行ってさっさと倒せばいいじゃない」


 あのエリーが我慢なんてできるわけないんだよなあ。


「……しかたない。実際早く倒さないと街に被害が出るかもしれないしな。確か敵は街の中央にいるんですよね」


「そうだ」


「ここから歩けばそれなりの距離がある。どのみちすぐに着くわけじゃない。そのあいだに少しでも……」


「シェイド! アンタの力でそいつのところまで道を作って」


「いいだろう」


「……せめて相手が複数いるのなら、布陣とか構成とかを調べてから……」


「パンドラ。先に様子を見て、敵のボスがどこにいるのか教えてちょうだい。アタシが一撃で倒すから。雑魚はアンタたちに任せるわ」


「わかったのダ」


 戦闘がはじまると分かった途端エリーが生き生きと指揮をとりはじめた。

 というかエリーも俺の奴隷のはずなのに、なぜか他の奴隷を手足のごとくこき使っている。

 いつから奴隷長になったんだろう。


「さあ行くわよ。アタシにケンカを売るということがどういうことなのか、ちゃんと教えてあげないとね。ふふっ」

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