エリー対シャルロット
エリーとシャルロットが相対する。
二人の距離はほとんど目の前。
いわゆる剣で戦う距離だ。
どうやら二人の実力は近いようだったが、この状況では魔法使いのシャルロットよりも、接近戦主体のエリーの方が有利だろう。
それをわかっているからか、エリーもニヤニヤと余裕の笑みを浮かべている。
「今なら泣いて謝れば晒し首で許してあげるわよ」
「<フリーズ>」
シャルロットが問答無用で魔法を発動した。
対象を凍らせる氷系の初級魔法だ。
エリーの体に白い霧のようなものがまとわりつき、急速に凍りついていく。
初級とはいえ「常闇の魔法使い」とまでいわれる魔法の天才シャルロットが使えば十分に人を殺せる威力になる。
だが。
「うざい」
エリーが聖剣を無造作に振るう。
それだけでエリーを取り囲んでいた白いもやが霧散した。
聖剣には女神様から授けられた光の魔力を帯びている。
初級の氷魔法程度ならその力だけで打ち消すことが可能なんだよな。
それを見たシャルロットが大げさに驚いた様子を見せる。
「あらあら、魔法を力ずくで打ち消すなんて。相変わらず野蛮な頭をしているのね」
そう言いながらシャルロットが後ろに下がって距離を取っていた。
どうやらエリーに初級魔法は効かないことを承知の上だったようだな。
出の速い初級魔法を使ったのも距離を取るためだろう。
とはいえ距離を取ったということは、シャルロットは自分の不利を自覚しているということだ。
このままならエリーが押し勝つだろう。
だが油断はできない。
相手はシャルロットだ。
なんの勝算もなく挑んでくるはずがない。
俺たちも隠れ家を出てエリーの方へ向かった。
シェイドとパンドラもついてくる。
それに気がついたシャルロットが笑みを浮かべた。
「あら、やっぱりイクスさんもいたんですね。いつも一緒にいましたものね。他にも初めましての方がいるようですが、この人数相手にたった四人でくるなんて。これで全員集合ということですか」
「そのたった四人どころか、アタシひとりに負けたくせによく言うわ」
「負けた? もしかしてこの捨て駒たちのことを言っているのですか? だとしたらそれはとんだ勘違いです。雑魚が何人倒れようと、私が立っていればそれでいいのですから」
「それは同感ね。アタシもこんなザコどもを倒したところで何ひとつ満足してないし、ねっ!」
エリーが地面を蹴る。
一瞬にして離れたはずのシャルロットの目の前に移動すると、手にした聖剣を振り下ろした。
切っ先が石畳おおわれた地面をえぐる。
ギリギリでかわしたシャルロットが再び距離を取りながら、杖を掲げる。
「<フリーズ>」
「効かないって言ってるでしょ!」
放たれた氷魔法を、エリーが聖剣で強引に打ち消す。
その様子を見て俺はやはり違和感を覚えた。
「おかしいな……」
展開だけを見ればエリーが一方的に押している。
だが、そもそもエリーの攻撃を二度もかわせること自体がおかしいんだ。
俺だってエリーのあの攻撃を防げる自信はない。
しかも二度もとなると、これは偶然なんかじゃない。
やはり何かある。
そう思った俺はシャルロットのステータスを確認することにした。
「<ステータス>」
俺の視界にシャルロットのステータスが表示された。
シャルロット=エーデルワイス
レベル:280
職業:闇魔法使い
「レベル280……!?」
人類限界の100を超えていることもそうだが、そもそもなぜステータスが表示されない?
まさかステータスを隠蔽する魔法まで使えるのか?
俺が驚いている間にも、エリーとシャルロットの戦いは続いていた。
といってもエリーが攻撃し、シャルロットが避けるという一方的な展開だったのだが。
さすがに効果がないと思ったのか、エリーが攻撃の手を止めた。
「あんた、アタシのこと呼んでたらしいけど、逃げてばっかで何がしたいわけ?」
「ふふ。それでいいのですよ。あなたたちが4人で全員ということ。自然に広場から離れること。この二つが達成できればそれで十分ですから」
「は? どういう……」
その瞬間、倒したはずの取り巻きたちが一斉に起き上がり、エリーにしがみついた。
「なっ!? ちょっと、汚い手でアタシに触るんじゃないわよ!」
エリーが取り巻きたちを振り払う。
そのとき、広間全体に巨大な魔法陣が出現した。
その魔法陣はエリーだけでなく、俺やシェイドたちまで捕らえている。
「ふふ。足止めご苦労様。これで終わりですわね」
シャルロットが口の端を歪ませるように笑い、魔方陣を起動させた。
シャルロット戦も少し長くなりそうです。




