魔剣グラムの威力
2日目の旅も順調で、空の旅も快適だった。
このペースなら今日中には予定の半分を移動することができるだろう。
眼下には濃密な森が広がっている。
木々の間隔が狭く、歩くとかなり時間を取られる場所だ。
森の生命力が強すぎるため、道を作ってもすぐに新しい木が生えてきて駄目にされてしまう。
そのため馬車で進むことも難しく、街へ向かう難所のひとつとなっていた。
それを飛んで越えられるのはかなり大きい。
日程も大幅に短縮できそうだ。
しばらく飛んだあと、昼過ぎに一度降りることにした。
ちょうど開けた場所があったので、そこで休憩することにする。
ずっと飛びっぱなしはドレイクたちも大変だろうからな。
「きゅいっ!」
そんなことない、大丈夫と言ったような気もするが、お昼も食べないといけないしな。
それに俺たちは空を飛べるからいいが、地上を走るしかないサラマンダーやタイガージャッカルはどうしても遅れてしまう。
合流するためにも、一度待ったほうがいいだろう。
地面に降りると、さっそくエリーが口を開く。
「ねえイクス、山菜採りとか下僕の仕事みたいで嫌なんだけど」
自分は奴隷だってことを忘れているのだろうか。
「そうはいっても食いもんは必要だろ」
「なにも自分でやる必要はないってことよ」
そういうと、何かを取り出して地面に放り投げる。
それは地面に当たると同時に破裂し、大きな音を響かせた。
「おいっ、そんな音を立てたらモンスターが集まって……」
そこまで言ってから気がつく。
「……モンスターを集めて従わせる気か」
「簡単でいいでしょ」
確かにこの森に住むモンスターなら自分たちが食べる食料の位置も把握しているだろう。
やがて森の奥の茂みが揺れ始め、モンスターたちがゾロゾロとやってくる。
森に住む狼フォレストウルフと、高い知能を持つ猿型のモンスター、キラーエイプだ。
どちらも数が多い。
俺の<敵感知>によれば10体以上はいるみたいだ。
それに周囲を囲まれている。
エリーがニコッと笑みを浮かべた。
「よろしくねご主人様」
「……主人扱いの荒い奴隷だな」
ため息をつきながら戦闘態勢に入る。
エリーの奴隷としての再教育は後回しにして、今は目の前の敵に集中しよう。
この辺りは木々が密集しているため、ドレイクやグリフォンたちによる空からの攻撃は効きにくい。
俺たち2人で対処しなければならない。
狼たちはこちらの様子を見るためか、茂みの中に身を潜めたままこちらの様子を伺っている。
なら様子を見るためにも、まずはこちらから一発攻撃してみよう。
「いくぞパンドラ」
「任せてオケご主人!」
手首につけていたリングが形を変え、魔剣グラムとなって手の中に収まる。
こいつの使い方にも慣れないといけないからな。
まずは軽くスキルを放ってみる。
「<疾風剣>!」
横なぎに素早い斬撃を繰り出す初級の剣技スキルだ。
フォレストウルフの1匹でも倒せれば牽制としてはそれで十分。
そんなふうに考えていたのだが。
ズバンッッッ!!!!
バカでかい三日月型の斬撃が空を斬る。
わずかに遅れて数百本もの木々がドミノ倒しのように倒れていく。
たったの一撃で、濃密な森の一角が更地に変わってしまった。
唖然とする俺の横で、あのエリーでさえもが言葉を失っている。
「きゃんきゃん!」
「うほっうほっ!」
茂みに潜んでいたフォレストウルフが一斉に地面に寝転がってお腹を見せてきた。
キラーエイプたちは手足を投げ出して地面に寝そべる。
同時に俺の<敵感知>から反応が消えた。
フォレストウルフ15匹。
キラーエイプ12匹。
たったの一撃で、全員が俺の奴隷となったようだ。
「……ふ、ふーん。少しはイクスもやるじゃない」
「そうダロウ! 我のスゴサがわかったカ!」
強がるエリーに、パンドラが得意げに声を上げる。
魔剣グラム。
神を殺す剣とも言われる、神話の中の神造兵器。
こいつは……強すぎる。
軽々しく扱っていい武器じゃない。使い方を考えないといけないな。




