ご主人様の新たなスキル
今後の方針は決まった。
もうこの街に長居は無用だ。
となれば早速準備するに限る。
幸いにも俺たちは冒険者だ。旅には慣れている。
ダンジョンにだって数日潜ることもあるくらいだからな。
隣街への移動の準備なんてあっというまに終わった。
しかし問題がいくつかある。
隣街までは徒歩で20日ほどかかるんだ。
なにせこのあたりは高レベルモンスターが生息してるからな。
安全な場所まで移動しないと次の街はないんだ。
もちろん冒険者の俺たちなら歩けない距離ではないし、途中にはいくつか休憩所もある。
だからといって歩きたいわけじゃない。
できることなら馬車を使いたいところだ。
だが、馬車の手配には冒険者ギルドの承認が必要だった。
なにしろこの辺りはモンスターが強い。
護衛は必須であり、そのためには冒険者ギルドの協力が不可欠だ。
そして今の冒険者ギルドはシャルロットが支配している。
まず協力は望めないだろう。
馬車は使えない。
ならやっぱり歩いていくしかない。
しかしこの辺りの敵は俺には少々手強い。
そこでやってきたのが「スキル屋」だった。
スキルを買うことができる、冒険者なら誰もがお世話になる場所だ。
店内には魔力石や巻物、色とりどりなポーションの瓶など、様々なアイテムが乱雑に置かれている。
そんな店内をエリーが興味深そうに見渡していた。
「ふーん、こんな店があったのね。初めてきたわ」
「初めてって……、今までスキルはどうしてたんだ?」
「スキルって最初から覚えてるんじゃないの?」
そういえばエリーは子供の頃に光の勇者となって以来、神聖魔法などの強力なスキルを使い放題なんだっけ。
「そんなのはエリーだけだよ。普通は修行して手に入れるか、スキル屋で買って覚えるものなんだ」
「スキルって買えるの?」
「スキルについてはよく分かってない部分も多いが、取得条件を満たすアイテムを使うことで習得できる物もあるんだ。魔力石だったり、スクロールだったりタイプは色々あるんだけどな」
また特殊な取得条件がある場合は、その情報を得るために対価が必要になったりする。
そういうのを買うのもスキル屋だ。
「ま、基本的に買えるのは基礎スキルがほとんどだけどな。それでも、ないよりはあった方がいい。敵感知や逃走なんかが欲しいんだよな。あとは料理とか、狩猟とか、そのあたりもあると楽になる」
「モンスターくらい倒せばいいじゃないの」
「俺はエリーじゃないから、そうそう簡単には倒せないんだよ。それに体力だって無限じゃない。1、2体は倒せても、何十体となると無理だからな。避けられる戦闘は避けた方がいい」
「ふーん。レベルが低いと大変なのね」
人ごとのようにつぶやく。
今自分がレベル1だってことを忘れているんだろうか。
「エリーだってスキルを覚える必要があるんだからな」
「神聖魔法はないの?」
「あるわけないだろ……」
本来なら厳しい修行を終えた高位の司祭や聖騎士にしか使えない魔法だ。
全世界でも使用できる者は十人もいるかどうか……。
最初から全部使えた光の勇者がチートすぎたんだよ。
「とりあえず、まずは自分のスキルを確認しようか」
俺は店番をしていた店員に話しかけ、自分のスキルを表示してもらった。
店員はローブを目深にかぶった、とても無口な人だった。
こちらから話かけても小さく頷くか、首を振るかしかしない。
まあエリーについても興味がなさそうだったんで、その点は助かるといえば助かるか。
とにかくまずは俺のスキルを確認する。
自分が覚えているスキルは「ステータス」では分からないからな。
これもまたスキル屋にくる理由のひとつだ。
「スキルオープン」
店員が小さな声でつぶやくと、俺のスキル一覧が空中に表示された。
書かれていたのは「剣技」や「筋力強化」といった戦士をしていれば自然と身につくスキルだ。
それらは昔から持っていたものでもあるので、特に目新しさはない。
だけど、スキル欄を一番下まで見たとき、俺は目を疑った。
「<奴隷化>……? なんだこれ……?」
今まで見たことも聞いたこともない、まったく新しいスキルが追加されていたんだ。




