第8話 担当アイドルの情報収集
「おにい、本当にリアナのマネージャーになったの?」
「なんだよ、本当にって。昨日も話したろうが。嘘なんかつかねぇよ」
「いや、あまりにも現実感が無くてさ」
「いやまぁ、気持ちはわからんでもないけどさ」
いきなり自分の兄妹が人気アイドルのマネージャーになりました! なんて言われてもそう簡単に信じれないよな。
俺も同じ立場だったら耳を疑うだろうし。
「でも、おにいにマネージャーなんて務まるの? おにいって人の気持ちとか全くわかんないじゃんか」
「……お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「感情のわからない悲しき獣?」
「人間ですらないじゃないか。あまりにも酷い」
渚は俺のことをそんな風に思ってたのか。
普通にショックを受ける。
だけど、こいつが言ってることが全く的外れかと聞かれたらそうとも言えない。
確かに俺は人の考えてることを理解はできるけど、共感はできない。
「だって、おにいはいっつも損得ばっかり考えてるし。感情よりも合理を優先するじゃんか」
「まあ、そうだな」
「だから、私は結構不安なんだよ? おにいに友達が出来るかな~とか。結婚出来るのかな~とかさ」
「おいおい。友達はともかくとして、結婚はまだ早すぎるだろう。俺はまだ十八だぞ?」
「でもさ、その年で交際経験が一切ないってのも珍しいんじゃない?」
「いや、そんな事はないと思うが」
世の男がそこまで交際経験があると思わないで欲しい。
いや、これは俺の偏見なのかもしれないが。
「だから、私はおにいがリアナちゃんとうまくやれるか本当に不安だよ」
「大丈夫だ。業務である以上、俺はうまくやるさ。それが仕事だからな」
「はぁ。そう言う事じゃないんだけどな~。ま、いいや」
「なんだよ。その意味深な物言いは」
「なんでもな~い。でも、本当に何か悩んだらなんでも相談してよね」
「ありがとう。その時は遠慮なく相談させてもらうよ」
渚は俺と違って交友関係が中々に広い。
人の気持ちも理解できるし、何よりも優しい。
だから、本当に困ったときは渚に相談するのが一番手っ取り早いだろうな。
それに、家族以外で俺が相談することなんて無いだろうし。
「うん! じゃあ、私はそろそろ寝るけど。おにいは?」
「俺は少し調べ物をしてから寝るよ。母さんが帰って来るくらいには寝ると思うから」
「了解~。じゃあ、おやすみおにい」
「ああ。おやすみ渚」
渚はニッコリと微笑んだ後に、リビングを後にして自室に戻っていった。
それを見送ってから俺はコーヒーを入れてノートパソコンを立ち上げる。
パソコンで調べる内容としてはもちろんアイドル。
もっと言うなら、望月リアナのことを調べる。
前も担当アイドルのことを調べるのは業務の一環と言われてしまったわけだし。
俺もその件については同意したから調べないわけにはいかない。
「ふぅ、マネージャーって結構大変なのな」
世のオタク達は自分の推しのマネージャーになりたいって言ってるやつをたまに聞くけど、それはやめた方がいいんじゃないかと心底思う。
だって、テレビ越しで見ている彼女たちは所詮は偶像なのだ。
テレビでは清楚かつ元気系と言われているリアナですら裏ではアレだ。
俺は彼女を推している訳でもなかったから、特に何も感じないけど。
推してるやつが裏をみたら絶望することになるだろう。
「にしても、本当に清楚で可愛いんだな。テレビではだけど」
裏ではあんな態度をとっているけど、テレビに映っている彼女はとても光り輝いていた。
だからこそ、心配になってしまう。
本心がアイドル側なのかプライベート側なのかはわからないけど。
「確かにストレスが溜まりそうではあるな。よく見てみるとたまに眉間がピクピクしてるし」
表情筋がつかれてるのか。
それとも、シンプルにイラついてるだけなのか。
「どっちもありえそうなのが怖い。まあ、あれか。一応グループメンバーも多少は調べておく必要はあるか」
それから俺はパソコンでリアナの所属しているアイドルグループのダストムーンについても調べておいた。
リアナを含めて五人で構成されているグループで全員高校生らしい。
まあ、ブランディングもあるだろうから本当かどうかはわからんが。
「ふむ。名前と顔が一致するくらいは覚えたし。もうこれでいいだろう。明日も学校だしそろそろ寝るかな」
明日は学校もあるし。そう言えば、リアナの分の弁当も作ったほうが良いかな。
良いだろうな。どうせあいつ何も持ってこないだろうし。
「凪? こんな時間まで起きていたの?」
「母さん。おかえり。仕事忙しそうだね」
「まあね。でも、これ位ちゃんのやらないと二人を養えないから」
「そんなに頑張らなくても。一応俺も良い条件の職が見つかったわけだし」
俺の仕事はそこまで激務と言うわけでもないし、母さんにはもう少しゆっくりしてほしいんだけど。
「そう言うわけにもいかないわよ。ま、もう少し歳をとったら頼るかもしれないけどね」
「その時は任せてくれよ」
「ええ。期待してるわ」
母さんと少し話してから俺は自室に向かって眠りにつく。
明日も早く起きて弁当を作って、リアナを迎えに行かないお行けない。
意外とやることは山積みでため息が出そうになる。
「ま、金のためだ。がんばろ」




