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助けた女の子は国民的アイドル(清楚)……しかし腹黒!?  作者: 夜空 叶ト


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第5話 このアイドル、やっぱりドSだ……

「で、時間を潰すって言っても何をするんだ?」


「そんなのはあんたが考えなさいよ」


「……お前すごく理不尽じゃね?」


 いきなり面白いことをしろって言われてるくらいの理不尽を感じる。

 こりゃ、貫井さんがあんな顔をするのは多少は納得ができるな。


「良いじゃない。プライベートくらいは自由に過ごさせなさいよ」


「そりゃあ、そうなんだけどさ。あんまりそういう態度をプライベートで取ってると、大事な場面で出てくるぞ?」


「私がそんなヘマをやらかすわけないでしょ。何年業界にいると思ってるのよ」


「はぁ。自信があるのは良いことだけど、あんまり油断してると本当に取り返しのつかないことになるぞ?」


 ここでリアナがどうなろうが知ったことではないけど、そのせいで俺の職が無くなるのは勘弁願いたい。


「だから、そんなことないって。心配のし過ぎなんだよ。凪は」


「心配するだろそりゃ。自分が担当しているアイドルが問題やらかさないか」


「本当にマネージャーみたいだね。凪」


「いや、本当にマネージャーなんですけどね。と言うわけで、多少は直してくれ」


「無理」


「……」


 真顔で即答が帰ってきた。

 一発くらいなら殴っても許されるのではなかろうか?


 いや、そんな事をしてもあんましメリットはないな。

 俺がスッキリするのと逮捕されるのが等価だなんてありえない。


 妹と母さんを養いたい俺としてはこんなところで逮捕されている暇は一ミリたりともないのだ。


「本当に細かいよ。凪。そんなんじゃ私のマネージャーなんて務まらないよ?」


「……貫井さんの苦労がわかってきた気がする。まだ一日目だけど」


 そりゃあ、あんな風にやつれた顔にもなるわ。

 こんな我儘に毎回付き合わされてたら溜まったもんじゃない。


「貫井なら結構私の要求に答えてくれたのよ?」


「……それは答えざる負えない状況なだけでは?」


 仕事上、出来る限りリアナの我儘を聞かないといけなかっただろうし。

 それにリアナと貫井さんは結構年齢に差がありそうだから。


 彼女のノリに付き合わされるのはさぞ疲れたことだろう。

 全く、俺も付き合い方を考えないといけないな。


「そんなのどうだっていいでしょ。それよりも、凪早く何か面白いことして?」


「面白い事と言ってもな。そもそも、俺はお前の好みとかも知らないんだぞ? そんな相手をどう笑わせればいいんだよ」


 知り合いであれば、笑わせる方法なり、喜ばせる方法なりはわかるんだが。

 何分俺たちは関係値がそこまで深くない。


 というか、昨日知り合ったばかりの知り合いって感覚に近い。

 そんな相手をいきなり笑わせるなんて難易度が高すぎる。


「う~ん、それくらいは自分で考えて? あなた私のマネージャーでしょ?」


「……あまりに理不尽だ。はぁ、お前の好きな物とかは?」


「秘密。というか、私の出演してる番組とかを見ればすぐにわかるよ」


「一日でそんなに大量の番組を見れるわけないだろうが」


「じゃあ、昨日何本動画を見たのか答えなさい?」


「……」


 実は一本も見ていません。

 と言うか、あんまりアイドルに興味が無さすぎて見れなかった。


 何なら、昨日渚におすすめの番組を教えてもらったのにも関わらず、めんどくさくて見なかったまである。


「その反応は絶対に見てないやつでしょ。どう落とし前つける気?」


「落とし前なんかつける気ないさ。そもそも俺は悪い事してないし」


「担当アイドルについての勉強を怠ったのは十分職務怠慢なんじゃない?」


「……確かに」


 職務怠慢までは言われないしにしても、もう少し勉強をしていたほうが良かったというのはあるかもしれない。


 流石に反省するべきか。

 それに、こいつとは長い付き合いになりそうだし。


 あんまり機嫌を損ねるのは得策とは言えないし。


「でしょ。と言うわけで、落とし前~。そこで四つん這いになりなさい?」


「……は?」


「だから、四つん這いになって。拒否権無し! 早く」


「へいへい」


 どうやら、こいつは腹黒属性だけでなくドS属性も兼ね備えているのか。

 てんこ盛りすぎないか?


 どこぞのラノベでもここまで設定を盛っているヒロインはいないぞ?

 見てくれだけなら本当にヒロインなんだけど。


 性格があまりにもキツ過ぎる。


「これで良いか?」


「そうそう。ちょうどいい感じね」


「まて、何をするつもりだ」


「座るのよ? こんなに座り心地のよさそうな椅子はそうそうないからね」


「……このドSめ」


 四つん這いになった俺の背中にリアナが座ってくる。

 めちゃくちゃ重いとか、そういうことはないけど。


 なんだか、非常に人としての書くが落ちた気がする。

 気がするというか、確実に落ちている。


 こんな感じに座られている時間が増えるたびに、人間としての尊厳がゴリゴリ削られていくような錯覚を覚えてならない。


「ドSなんてとても良い誉め言葉ね。テレビでは清楚系で通ってるからあんまり言われないのよね」


「……テレビで出てくる情報が一切信用できなくなりそうだよ。全く」


「テレビで出てくる話なんて大体嘘ばっかりよ? それこそ、彼氏がいないって言ってるアイドルの子に彼氏がいるなんてことざらにあるもの」


「……今の話を聞いたら世のオタク達は泣くぞ?」


 実際にアイドルにガチ恋をしている人は少なくないと思う。

 そんな人たちが今の話を聞いたら、絶対になくと思う。


 泣くだけならまだしも、変にストーカーになったりしたら大問題だ。


「当たり前のことよ。この世の中、嘘で成り立ってるんだから」


「なんて幸がない世の中なんだ」


「そういう物よ。というか、私のマネージャーになるんだからこれくらいは慣れておかないと」


「慣れたくねぇ」


 こんな世界に慣れてしまったら誰のことも信用できなくなりそうで非常に怖い。

 だけど、それが業界と言われるのなら致し方がない。


 郷に入っては郷に従えともいうしな。

 慣れるしかない。


「ちなみになんだが、お前に彼氏はいるのか?」


「なんで知りたいの?」


「そりゃあ、担当アイドルに彼氏がいるんならそれを隠す努力を俺はしないといけないだろ?」


「ふ~ん、まあその通りね。いないわよ。彼氏なんか。そもそも付き合ったこともないし」


「へ~。それは意外だな。お前くらい可愛いなら彼氏くらい出来そうなものだけどな。……ああ」


「なに? そのわかったような顔は」


 そう言えば、こいつ性格に難ありだった。

 こんなことをさせてくる女と付き合いたい男はあんまりいないしな。


 それこそドMの方々くらいだ。

 俺はそう言う性癖を持っている人間じゃないからあしからず。


「いや、何でもないよ。あはは~」


「……気に食わないわね。えい」


「痛ってぇ! おま、シンプルに踵で手の甲を踏むな。めちゃくちゃ痛い」


「お仕置きよ。私を不快にさせた」


 本当にこいつ、理不尽だ。

 今まで長い間よく耐えたもんだ。貫井さん。


 こんな理不尽を長期間味わってたらそりゃあ顔色も悪くなるか。

 俺も既に顔色が悪くなってきそうだもの。


「悪かったって。あと、そろそろ降りてくれ」


「ええ~もうちょっと」


「嫌だ。これ以上されると俺が死ぬ。尊厳的に」


「別にいいんじゃない? 私にはそこまで関係ないし」


「……仮にもお前のマネージャーだから、少しは気を使って欲しいんだがな」


 ずっと、こんな扱いを受けるなら流石に改善策を考えないといけない。

 まあ、もう少し関わってみて関係性を深めるしかないな。


「まあいいや。よっと」


「やっと降りてくれたか。あんまりこんなことをしないでくれよ? 死にたくなってくる」


「え? なんで」


「だって、二個も年下の女の子に椅子にされるなんて男としてかなり酷い部類だろ」


「私は情けない男の人好きだけどな~」


「……」


 うん。こいつ、やっぱりドSだ。

 あまりにもドS過ぎる。


 もう、清楚系アイドルなんて肩書投げ捨ててドS系腹黒アイドルとして売り出したほうが売れるんじゃなかろうか。


「お前の趣味についてとやかく言うわけじゃないが、流石に悪趣味だと思うぞ」


「そんなことない。でも、ちょっと面白かった」


「……はぁ。ならいいか」


 めちゃくちゃ俺の尊厳は傷ついたけど、それでこいつが楽しんでいるならメリットか。俺が不快な思いをするのとこいつの笑顔だったら余裕でプラスか。


 合理的に考えてこちらの方がいいのなら俺はそれで構わない。


「んじゃま、昼まで雑談でもしてるか?」


「い~や、眠くなってきたから寝たい。せっかくこんなにも天気が良いわけだし」


「だな。じゃ、寝るか」


「膝貸して」


「かしこまりました。リアナ様」


 俺が座って胡坐をかくと膝の上にリアナが頭をのせてくる。

 こんなことをするのは、渚を除いて初めてだな。


「ん~いい寝心地。動かないでね?」


「わかってる。てか、嫌じゃないのか? 好きでもない男に膝枕とかされて」


「嫌ならこんな風に膝枕してもらってない。だから気にしなくていい」


「そうかい」


 よくよくリアナの顔を見てみれば、目の下にクマが出来てる。

 あまり寝れていないのか?


「……そんなに見つめられると寝にくいんだけど」


「すまん。一つ聞くが、ちゃんと寝れてるか?」


「なんでそんな事聞くの?」


「いや、目の下にクマが出来てるからな。気になったんだ」


「ま~不眠症とかじゃないんだけど、眠りはあんまり深くないかな。特に理由があるってわけでもないんだけどね」


「なら、今のうちにちゃんと寝とかないとな。子守歌でも歌おうか?」


「いらない。凪歌下手そうだし」


「失礼な」


 まあ、実際歌が上手いわけじゃないからリアナの言ってることはあってるんだけどな。


 本職のアイドルに歌唱力では遠く及ばないだろうしな。


「じゃ、おやすみ凪」


「ああ。おやすみリアナ」


 しばらくすると膝の上で眠っているリアナから寝息が聞こえ始める。

 本当に疲れてるんだな。


「にしてもこいつ、こんな風に黙ってると本当に可愛いな」


 国中で人気な理由が少しわかった。

 この容姿で世間では清楚で通っているんなら人気が出るのも頷ける。


「喋らなければ百点だな。ま、こんな事こいつが起きてる時には口が裂けても言えないが」


 もし、言ってしまったらお仕置きと称して何をされるか分かったもんじゃない。

 無用な争いやリスクは避けるべきだ。


 それに、こんな事を言ってもなんのメリットもないしな。

 今はこいつが安心して眠れるように枕に努めることにしよう。


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