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助けた女の子は国民的アイドル(清楚)……しかし腹黒!?  作者: 夜空 叶ト


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第4話 闇が見えるリアナと二人のサボり

「お、おい。あれ見ろよ」


「ん、いきなりなんだ……よ」


「あの望月さんが男と歩いてるぞ!?」


「マジかよ」


 マネージャーになって初日。

 俺はリアナと二人で登校をしているのだが、視線が物凄く痛い。


 大体は男子たちから嫉妬や敵意の籠った眼で見られる。

 人から悪意を向けられるのにはある程度慣れているけど。


 ここまで露骨にされると流石に気分が悪い。


「やっぱり有名人は大変だね」


「そうでしょ。その気持ちが少しでもわかってもらえたなら嬉しいよ」


 隣を歩くリアナは苦笑いを浮かべていた。

 人目があるからか口調も仕草も凄く丁寧だ。


 確かに、いつからアイドルを続けているのかは知らないけど。

 こんな視線を常に向けられ続けたらストレスもたまるってもんだよな。


 流石に少し同情するわ。


「帰りはどうする? 迎えに行った方が良いか?」


「今日の帰りはレッスンで事務所に行かなきゃだからついてきて。帰るときは車が迎えに来るから」


「わかった。それと、気になってたんだがお前弁当は?」


「そんなの持ってきてないよ。ていうか、作ってくれる人いないし」


「……はぁ」


 どうやら、ストレスの原因は家の中にも潜んでいたらしい。

 俺は地雷を踏んでしまったわけか。


 いや、決めつけるのは良くないけど。

 今日感じたこいつの家の違和感はそう言う事だったのか。


 両親は亡くなっているか、もしくは別居してるってことなんだろう。

 そうなると弁当を持っていないことにも辻褄が合う。


「これ、持ってけよ」


「なにこれ」


「俺の弁当だ。ちなみに作ったのも俺な」


「良いの? これ凪の弁当なんでしょ」


「別にいい。というか、アイドルなんだからちゃんと栄養を摂っとかないとぶっ倒れるぞ?」


 昨日マネージャーになることが決まってからある程度アイドルについては調べた。

 アイドルってのはかなり肉体的にしんどい物らしい。


 ダンスレッスン然り発声練習然り。

 過酷な練習を何も食べないで乗り切れるほど甘くはないだろう。


「ふ~ん。凪って気を遣うこと出来たんだ」


「お前は俺を何だと思ってるんだ。全く失礼な奴だ」


「ごめんごめん。でも、ありがと。正直助かる」


「別にいい。お前にぶっ倒れられたら俺の職がなくなる。それは困るんでな」


「……一言余計だぞ。凪」


「良く言われる。それと、学校で何か問題が起きたら俺にすぐに連絡してくれ。助けに行くから」


「はいはい。分かりましたよ~。それじゃ、またあとでね」


「ああ。またあとで」


 一年生の教室は四階にあり、三年生の教室は二階だ。そのため、階段で俺たちは別れる。


 別れた瞬間、男子たちからの殺意がより一層増した気がするけど、それを気にしたら負けな気がするので何も知らないふりをする。


「やあやあおにい。元気してる?」


「どした~渚。俺は忙しいんだ~」


「はいはい。嘘つかないの。凄く暇そうじゃん」


「で、何の用だ? わざわざ俺の教室に来るなんて珍しい」


「ちょっとお話があります。屋上まで来てください」


「……ええ。決闘か何か?」


 いつになく真剣な様子の渚にめんどくささを感じる。

 でも、どうせここで俺が何を言っても渚は聞いてくれないんだろうな。


 もう十数年の付き合いだから妹の行動心理くらいはわかってしまう。

 お兄ちゃんと言うのも辛いものだ。


「そんなわけないでしょ。それより、早く行くよ」


「へいへい」


 引っ張られるようにして、俺は屋上に連れていかれる。

 そう言えば……自分の分の弁当どうしようかな。


 持ってきた奴はリアナにあげちゃったし。

 購買で何か買おうにも俺は今日財布を持ってきていない。


 ……渚に金を借りるか?

 いや、それをしてしまったら兄として最低になってしまわないか?


「おにい、本当に望月リアナのマネージャーになってたんだね」


「そりゃ、昨日も言ったろ。信用してなかったのか?」


「いや、嘘は言ってないとは思ってたんだけどね。どうしても現実味が無くてさ」


「ま、確かにそうだわな。兄がいきなり人気アイドルのマネージャーになりました! なんてそう簡単に信用できないよな」


 俺が渚と同じ立場だったら簡単には信用できないだろうし。

 疑われたからと言って気分が悪くなるなんてことも別にない。


「そうなんだよね。でも、あんな風に二人で歩いてるのを見ちゃうとね。信じざる負えないというかさ」


「嘘は言ってないわけだし。その話がしたかっただけか?」


「いや、今日の帰りは遅くなるのかなと思って」


「ああ、なんか今日の帰りはレッスンがあるとか何とかで同行するから遅くなると思う。夕飯はなんか作って食べておいてくれ」


「はいは~い。あんまり遅くなっちゃいやだからね?」


「へいへい。まあ、遅くなるかどうかはわからんのだが」


 こればっかりは俺にはわからない。

 リアナのダンスレッスンがいつまで続くのかによって変わってくるだろうし。


「ん。もし凄く遅くなりそうなら連絡入れて。心配だから」


「わかった。ありがとな」


 クシャクシャと渚の頭を撫でる。

 やっぱり、いつまで経ってもこいつは俺の妹なんだなと。


 そんな事を思いながら撫でていると抗議の声が上がってくる。


「撫でるなら、もっと丁寧に撫でてよね~。せっかく髪をセットしてきたのに崩れちゃうじゃん」


「悪いな。あんまりにも渚が素直で可愛かったからつい」


「も~。おにいは本当にシスコンなんだから。早く彼女でも作って妹を安心させて欲しい物です」


「悪いけど、今の所その予兆は全くないな」


 彼女をそこまで欲しいと思ったことがない。

 俺は現状に満足している。


 妹がいて母がいて。それだけで俺は満足だ。

 下手に交友関係を広げて優先順位を見失うようなことをするのは非効率的だし。


 何よりも合理的じゃない。

 俺には家族がいればそれで十分だ。


「知ってるよ。私達のことを大事にしてくれるのは嬉しいけど。おにいはもうちょっと自分の幸せを考えて良いと思うんだけどな」


「考えてるさ。俺は渚と母さんが幸せならそれで十分幸せだからな」


「はぁ、嬉しんだけどそう言う事じゃないんだよな~」


 渚が呆れたようにため息をついているのを傍目で見ながら、俺は屋上を後にする。

 この後は普通に授業なのだが、普通にやる気が出ない。


 というか、普通に最近いろんなことが起こりすぎて混乱しているっていうのもある。

 幸いな事にもう受験をする必要がなくなってしまったし、そこまで学校の単位などにこだわる理由も無くなってしまった。


「やる気がでんな。よし、サボろうか」


 気が付けば俺は教室を出て、先ほどまで渚といた屋上に足を運んでいた。

 今日は晴天で日差しが物凄く心地いい。


 九月の後半であるから風も冷たくて、それがまた絶妙に気持ちいいんだな~。


「ひなたぼっこ最高」


 屋上の地面のコンクリートに全身を委ねながら、空を見上げる。

 そこにはどこまで続く青くて綺麗な空が広がっていた。


「……何してんのよ」


「ん? リアナか」


 屋上の扉を開けて入ってきたのは、なにしてんだこいつ? とでも言いたそうな目をしたリアナだった。


「サボり?」


「そうそう。なんかやる気なくなっちゃって。そう言うリアナは?」


「私もよ。今日はアンタと登校したからか凄く注目されちゃってね。質問攻めにあった感じ」


「ああ~なるほど。人気アイドルも大変だな」


「本当よ。全く」


 俺の隣に腰を下ろしながら、リアナは深くため息をつく。

 本当に気苦労が耐えなそうで、少しだけ心配する。


 だが、少し心配してからすぐにどうでも良くなる。

 心配してもそこまでメリットないしな。


「そう言うわけで、午前は私の暇つぶしに付き合いなさい」


「別にいいぞ~。俺もサボるつもりだったし」


「で、午後は学校抜け出してちゃっちゃとレッスン行っちゃおう。車呼んどくから」


「へいへい。リアナの好きなようにしてくれ。俺はお前をサポートするマネージャーだからな」


 こうして俺たちは午前をサボって過ごし、午後をリアナのダンスレッスンをする運びとなったのだ。


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