第3話 驚く妹と始まる腹黒との学校生活
「おにい、今日学校サボったでしょ」
「……なんでわかるんだよ」
「だって、お昼休みにおにいの教室行ったらいなかったんだもん。どこで何してたわけ?」
「ちょっといろいろあってな」
リアナと会話を終え、もろもろの手続きをしていたらそれなりに遅い時間になっていた。
ちなみに契約書の方は保護者のサインがいるので持ち帰ることになった。
「色々って何さ。全くもう」
家に帰って真っ先に俺のことを説教してくるこいつは海原 渚。俺の二個下の妹で高校一年生。
ちなみに同じ高校。成績はそこそこで運動神経もそこそこの平凡な女の子って感じ。
まあ、俺も人のことは言えないんだけど。
渚は贔屓目抜きでも、かなり容姿が整っていると思う。
黒く艶やかなボブカットで瞳は深海みたいな青色。
ややこがらで胸も全くないのがたまに傷。
ちなみに、本人は自分の胸のことを気にしてるらしい。
「それより妹よ。お前、ダストムーンって知ってるか?」
「ん? おにいがアイドルの話なんて珍しいね。どういう風の吹きまわし?」
「色々あったんだよ。それで、有名なのか?」
「そりゃもちろん。来年にドーム公演も決まってるくらいだし。最近ではアイドルに詳しくない人でも知ってるくらいには凄いグループだよ」
なるほど。国民的アイドルってのは嘘じゃないみたいだな。
てか、最近テレビとか見てねぇから俺が知らなくても当然か。
「ふ~ん。凄いんだな」
「そうそう。特にセンターの望月リアナちゃんが可愛いんだよ~。清楚かつ元気で見ててにやけちゃうんだよね」
「……」
ニヤニヤしながら語る渚をみて、背筋がゾクゾクしてしまう。
俺の知っているリアナは腹黒でおそらくドSだ。
だって、俺が困っていると物凄く嬉しそうにしながら嗜虐的な笑みを浮かんでいたからな。
性格が悪いのにもほどがある。
「おにい、なんでそんなに嫌そうな顔してるの?」
「何でもない。それよりも母さんは?」
「仕事。今日は遅くなるって」
「わかった。晩御飯はもう食べたか?」
「まだ食べてないよ~。そもそも私が料理できないのおにい知ってんじゃん?」
自慢げに胸を張りながらいうことでもないだろうに。
まあ、渚が料理できないのは知ってるし。
出来てないだろうな~って思って聞いてるから予想通りではあるんだけどさ。
「はぁ。わかったわかった。今から適当に作るから待っててくれ」
「おにい大好き! えへへ~」
妹に抱き着かれても何も感じまい。
でも、こんな風に懐かれてるのは嫌な気はしないけど。
「あとさ、一つおにいに聞きたいことがあるんだけど。いいかな?」
「なんだ? 答えられることなら答えるが」
「なんで、おにいから他の女の匂いがするの?」
「他の女の匂い? なんでそんなものを嗅ぎ分けれるんだよ。ちょっと怖いぞ。お前」
目を曇らせながら渚が詰め寄ってくる。
全く、昔からこいつは俺が誰かと関わっているとすぐに嫉妬してくるんだから。
そろそろ兄離れをして欲しいという気持ち半分。
こんな風に慕われて嬉しいという気持ちが半分といった感じ。
「いいから答えてよ」
「えっとな? 端的に言うとアイドルのマネージャーになった」
「え? 誰の? お兄の妄想とかじゃなくて?」
「お前は俺がそんな変な妄想をしないって知ってるだろ」
「うん。おにいは正直頭のおかしなくらい合理主義者だからね。妄想なんて非効率的な事はしないだろうけど」
「そう言うわけでマジだ。ちなみにそのアイドルが望月リアナだな」
「ふぇ!?」
そんな素っ頓狂な声をあげて驚くことか?
いや、まあ額面を聞いたらもっと驚くと思うけどな。
「しかも、月給三十万だ」
「ひゃぁぁぁぁっぁぁ!?」
あまりに高すぎる金額に渚の頭がおかしくなってしまった。
壊れかけのロボットみたいにがくがくと少しだけ動いてからぷしゅ~と声を上げてぐったりしてしまった。
ふぅ、今のうちに晩飯作っとくか。
母さんにはさっきメッセージを送っておいたし。
これである程度は母さんに楽をさせてやれるな。
◇
「おはよう凪。約束通り、ちゃんと迎えに来たわね」
「そりゃ、一応業務だからな。というか、学校行くときはその格好なのな」
俺は昨日呼び出された彼女の家に呼び出されていた。
曰く、最近は変な男に絡まれることが多かったのだから登校に付き添ってほしいとのことだった。
社長にも言われてしまったのでやらざる負えなくなった俺は仕方なく朝早くに彼女の家の前を訪れていた。
大きな一軒家、だけどその中からは人の気配を感じない。
この年で一人暮らしをしているのだろうか?
いや、余計なことを考えるのはやめよう。こんなことを考えてもメリットがない。
「しょうがないでしょ。こんな格好でもしてないと目立って仕方がないんだから」
「大人気アイドルってのも大変だな」
俺には全くわからない気苦労だ。
まあ、この変装をしても男に絡まれるんだから本当に大変なんだろうな。
「本当にね。と言うわけで、マネージャー兼ボディーガードよろしくね? 凪先輩」
「……なんか気味が悪いな」
手を後ろで組んで少し前傾姿勢になりながら、リアナは俺のことを見上げてくる。
確かに容姿は整っていると思う。
スタイルもいいし、声も綺麗。表の性格は凄く良い物と言えよう。
だけど、俺は残念な事に裏の顔を知ってしまっている。
だからなのか、俺はこの子のことをどうしても純粋に可愛いとは思えなかった。
「……失礼にもほどがあるだろ」
周囲に誰もいないことを確認してから、リアナは眉間に皺を寄せて睨みつけてくる。
さっきの可愛い表情とギャップがあり過ぎて風邪を引きそうだ。
それに、ちゃんと周りを見てからやってる当たりこざかしい。
「はいはい。ごめんなさいっと。それよりとっとと学校行くぞ」
「なんか、凪って本当に変な人だね」
「毎回毎回俺を変人扱いするのはやめてくれ。俺はよっぽどまともだ」
「知ってる。と言うか、まともすぎるせいで変」
まともすぎるせいで変ってどういうことだ?
完全に意味が分からないんだが。
「意味わかんねぇ。ほら、とっとと行くぞ。カバン貸せ」
「え? 持ってくれんの?」
「これくらいはマネージャーの業務の一環だ」
「ありがと。じゃ行こうか」
こうして俺たちは学校に向かうのだった。




