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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
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第97話 考えるより先に

 先生が両手を術式の壁にかざした。光が、これまでにない強さで満ち始める。

 反転術式そのものを起動する、最後の段階だった。


 ⸻


 先生の身体から、力が急激に失われていくのが分かった。ここまでの緊張と消耗の積み重ねが、限界に近づいていた。

 壁の光が、一瞬揺らいだ。不安定に瞬き、明滅する。先生の顔から、みるみる血の気が引いていった。

「足りない……」

 掠れた声が漏れた。指先が術式を繋ぎ止めようと震えている。余裕は、もうどこにもなかった。


 ⸻


 零司はその瞬間を見て、考えるより先に身体が動いていた。

 体力魔力共有のスキルを発動する。楓、澪、瑠奈の力が、自分を通して集まってくる感覚があった。迷いはなかった。

 三人分の力が、大きな流れとなって零司の中を通り抜け、先生へと注ぎ込まれていく。


 ⸻


 楓は自分の中から何かが引き出されていく感覚を覚えながらも、意志を込めるように力を差し出した。澪も、瑠奈も同じだった。苦痛ではなく、はっきりとした意志だった。

 先生の術式が、持ち直した。揺らいでいた光が、再び強さを取り戻していく。


 ⸻


 先生が、はっと目を見開いた。一瞬だけ、零司たちの方を振り返る。

 何かを言おうとした唇が、そのまま止まった。今はそれどころではないと、自分でも分かっているようだった。

 小さく、ただ一度だけ頷いた。それだけで、十分だった。


 ⸻


 先生は再び術式へと意識を戻し、両手を強く壁に押し当てた。

 遠く離れた5つの場所の気配が、1つ、また一つと、確かな手応えとなって繋がっていく。ルーヴェ村、そして名前も知らない残る四つ。

 すべてが、今、1つに重なろうとしていた。


 ⸻


 5つすべてが起動し終わった瞬間、通路全体が眩い光に包まれ始めた。

 セリオンは、その光をただ見つめていた。

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