第96話 もう、止めるつもりがない
澪は結界を保ったまま、セリオンから目を離さなかった。先生が準備を整えたと告げてから、まだ何も終わっていない。むしろここからが本番だという緊張が、澪の背筋を強張らせていた。
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先生の呼吸が、少しずつ変わっていく。壁の術式の光が、これまでとは違う色を帯び始めた。
遠く離れた場所にあるはずの5つの神殿が、目に見えない糸で結ばれていくような感覚があった。澪自身には術式のことは分からない。それでも、肌に触れる空気の質が変わっていくのを、確かに感じ取れた。
ルーヴェ村。そして、名前も知らない残りの村々。
それぞれが遠く離れているはずなのに、今、同じ何かに応えようとしている。
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セリオンは、相変わらず動かなかった。
澪はその沈黙を、警戒していた。何か言葉を発するか、あるいは最後の抵抗を見せるか。身構えていたが、セリオンは何も言わなかった。
フードの奥から、四人と先生を見ているだけだった。
もう、止めるつもりがないのかもしれない。
澪の中に、そんな考えがふと浮かんだ。理由は分からない。それでも、目の前の沈黙は、そうとしか思えないものだった。
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先生が、ゆっくりと顔を上げた。零司、楓、瑠奈、そして澪の顔を、一人ずつ順に見ていく。
零司が小さく頷いた。楓も、瑠奈も、それぞれ無言のまま頷き返す。
澪は結界を保ったまま、最後にもう一度セリオンを見た。それから、先生に向かって頷いた。
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壁の術式の光が、静かに、しかし確実に強さを増していく。5つの場所すべてが、今、繋がろうとしていた。
セリオンはまだそこに立っていた。しかし、もう手を伸ばそうとはしなかった。
通路には、これから起きることを待つだけの、静かな緊張だけが満ちていた。




