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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
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第95話 視線が、一瞬だけ

 壁の術式の光は、まだ強さを増し続けていた。今にも何かが弾けそうな気配が、通路に満ちている。

 先生が目を閉じた。零司の手を通して、力の流れが強まっていくのが分かった。澪、楓、瑠奈は警戒を解かないまま、それぞれの位置で先生を見守っていた。

 セリオンは、動かなかった。ただそこに立ち、四人と先生を見ていた。


 ⸻


 先生の呼吸が、次第に深く、規則的になっていく。集中が高まっているのが、傍にいる零司にも伝わってきた。

 壁の術式が、さらに強い光を放ち始めた瞬間があった。零司はその時、確かに感じた。

 セリオンなら、今、止められたはずだった。

 本気で阻もうとすれば、力ずくで発動を妨げることもできたはずだ。周囲の術式も、彼女の意のままに動くもののはずだった。

 しかし、何も起こらなかった。


 ⸻


 零司はセリオンの方を見た。フードの奥の顔は、変わらず読み取れなかった。

 ただ、一瞬だけ、その視線が先生の方を向いていた気がした。

 何を思っての視線なのか、零司には分からなかった。長く見ていたわけでもない。錯覚だったのかもしれない。それでも、確かにそう見えた。

 セリオンはすぐにまた、四人全体へと視線を戻した。それ以上、何の変化もなかった。


 ⸻


「今……」

 先生の唇から、短い呟きが漏れた。意識の奥で、何かが確かに動いているようだった。

 遠くの気配が、少しずつ強くなっていく。5つの場所それぞれで、何かが呼応するように反応し始めているのが、零司にもわずかに伝わってきた。

 先生の眉間に、深い皺が刻まれる。それでも、崩れなかった。


 ⸻


 長い沈黙の後、先生がゆっくりと目を開けた。

「準備が、整った」

 かすれた声だった。それでも、確かな響きがあった。

 セリオンは、まだそこに立っていた。動かないまま、何も言わないまま。

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