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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
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第94話 変わりませんね

 足音が、通路の角を曲がってこちらへ向かってくる。光の差す方向から、ゆっくりと人影が現れた。

 フードの奥の顔は、あの日と変わらなかった。怒りも、動揺も見せない。ただ静かな、管理者の目がそこにあった。

「戻ってくるとは、思いませんでした」

 セリオンの声は、感情の起伏を感じさせなかった。四人と、その中心で身体を支えられている先生を、順に見渡す。


 ⸻


「その方の役割は、まだ終わっていません」

 セリオンは先生に視線を止めて言った。抑揚のない声だからこそ、その言葉は重く四人の耳に残った。

「戻りなさい」

 短く、それだけを繰り返す。優しくもなく、厳しくもない。ただ事実を述べるような口調だった。

 周囲の壁に刻まれた術式が、わずかに光を帯び始めた。澪がすぐに結界を構え、瑠奈と楓もそれぞれ身構える。


 ⸻


 零司は先生を庇うように、一歩前に出た。

「渡すつもりは、ありません」

 セリオンはしばらく零司を見つめた。それから、静かに口を開いた。

「変わりませんね」

 以前と同じ言葉だった。あの塔の上層で聞いた響きと、寸分違わなかった。

「変わりません」

 零司も同じ言葉を返した。しかし、今度は違う。隣には先生がいる。先生自身の意志が、そこに加わっていた。


 ⸻


 先生が、零司の腕に支えられながら顔を上げた。息はまだ整っていなかったが、目には力があった。

「セリオン」

 掠れた声で、先生はセリオンの名を呼んだ。

「適性者としての役割は、拒否します。私は、この子たちと一緒に、元の世界へ帰ります」

 一語一語、確かめるように紡がれた言葉だった。

 セリオンの表情に、わずかな揺らぎが差した。完全な無表情ではなくなった、その程度の変化だった。


 ⸻


 沈黙が落ちた。壁の術式の光が、少しずつ強さを増していく。今にも何かが起こりそうな気配が、通路全体に張り詰めていた。

 セリオンは何も言わず、ただそこに立ち続けていた。

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