第93話 繋がった、と思う
「その辺の場所じゃ、繋がらないと思う」
先生の言葉に、四人は顔を見合わせた。
「術式の中枢に近い場所じゃないと……たぶん、星冠の塔」
澪が息を呑んだ。「戻るんですか、あそこに」
「他に、方法がない」
先生の声は静かだったが、揺るがなかった。
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楓がマッピングを開き、塔までの道筋を確認する。追っ手を避けながら進める経路は限られていた。
「裏手から、地下の通路を使えば」
瑠奈が先行し、物陰から物陰へと四人を導いた。会話はほとんどなかった。息を潜め、足音を殺しながら、来た道を逆に辿るように進んでいく。
塔の裏手に近づくにつれ、空気が変わっていくのを零司は感じた。前に来た時と同じ、無機質な冷たさが肌を刺す。
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地下の一角、術式の刻まれた壁が続く場所に辿り着いた。先生は壁に手をつき、目を閉じた。
「ここなら……」
呟くように言うと、先生は意識を集中させ始めた。
澪が結界を張り、瑠奈が通路の先を警戒する。楓は先生の傍に膝をつき、鑑定で状態を見守った。零司はいつでも力を送れるよう、先生の隣に控えた。
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先生の呼吸が、次第に浅くなっていった。額に汗が滲む。指先が小さく震え始めた。
「まだ、繋がらない……」
苦しげな声だった。壁の術式がわずかに光を帯びる。しかしそれ以上、何も起こらなかった。
時間だけが過ぎていく。楓が鑑定の結果を確認し、小さく首を振った。
「先生、無理は……」
「大丈夫」
先生は目を閉じたまま、遮るように言った。
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やがて、先生の表情がわずかに変わった。
「感じる……遠くに……」
微かな声だった。五芒星の輪郭のようなものが、意識の端に触れたのだろう。5つの神殿の気配を、1つずつ辿っているような、そんな沈黙が続いた。
しかし同時に、先生の身体が大きく傾いだ。楓が慌てて支える。
「危ない……機関の方に、引っ張られそう……」
零司はその言葉を聞いて、すぐに動いた。
「先生」
体力魔力共有のスキルを発動する。自分の中の力が、先生へと流れ込んでいく感覚があった。澪と楓と瑠奈も、それぞれの形で先生に手を伸ばした。澪が肩を支え、瑠奈が手を握り、楓が声をかけ続けた。
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先生の身体から、力が抜けていく。それでも、意識だけは辛うじて繋ぎ止められているようだった。
長い沈黙の後、先生が大きく息を吐いた。ゆっくりと目を開ける。
「繋がった、と思う」
声はかすれていたが、確かな響きがあった。
その瞬間、通路の奥で何かが動く気配がした。瑠奈がはっと顔を上げ、警戒するように身構える。
足音が、少しずつ近づいてきていた。




