第92話 適性者としての力
夜が明けきらないうちに、瑠奈が戻ってきた。息を切らしていた。
「増えてる。神官と兵士……周りに、何人もいる」
その一言で、部屋の空気が張り詰めた。澪が窓の隙間から外を確認する。楓は先生の傍に寄り、様子を窺った。
「監視を止めたこと、いつバレてもおかしくないですよね」
澪の声には、隠しきれない焦りがあった。
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零司は先生を見た。少し前に言いかけて、そのまま口をつぐんだ言葉のことが、ずっと頭に残っていた。
「先生」
呼びかけると、先生はゆっくりとこちらを向いた。しばらく黙っていたが、やがて小さく息を吸った。
「話すわ」
決意を固めたような声だった。
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「セリオンが、私を特別扱いした理由……たぶん、これだと思う」
先生は自分の掌を見つめながら続けた。
「増幅適性者。星冠の塔で、術式が私の中を通っていくたびに、増幅されて外へ流れていった。私の身体そのものが、術式を通す媒介になっていたみたい」
澪が息を呑む。楓も瑠奈も、黙って先生の言葉を待った。
「だから、もしかしたら……私の力を使えば、星脈機関そのものに、遠くからでも干渉できるかもしれない」
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「5つの神殿に、直接行かなくても?」
瑠奈が身を乗り出した。先生は頷いたが、すぐに表情を引き締めた。
「試したことはないの。成功する保証も、ない」
言葉を選びながら、先生は繰り返した。「あくまで、可能性の話よ」
澪が眉を寄せた。「危険は、どれくらいあるんですか」
「分からない。星脈機関に、また接続に近い状態になるのかもしれない。負担がどれくらいか、想像もつかない」
楓の顔が強張った。「先生に、そんな負担……」
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零司は拳を握った。これ以上、先生に何かを背負わせることへの躊躇いが、胸の中で渦を巻いていた。
「先生」
もう一度呼びかけたが、続く言葉が出てこなかった。
先生は零司の方を見て、静かに首を振った。
「他に、方法がない」
それから、はっきりとした声で続けた。
「やってみるしかないと思う」
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四人はそれぞれの表情で、その言葉を受け止めた。澪は唇を噛み、楓は視線を落とし、瑠奈は先生をまっすぐ見つめた。
外で、何かの物音がした。誰かの足音が、少しずつこちらへ近づいてくる気配があった。




