第91話 逆に回す
四人と先生が、隠れ家の中央に集まった。先生の顔色は、以前よりも明らかに良くなっていた。
「少し、楽になったわ」
先生が小さく言った。澪が安堵したように頬を緩める。楓と瑠奈も、その変化に気づいていた。
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「あれから、ずっと考えていたの」
先生が切り出した。皆の視線が集まる。
「星冠の塔で……私の中を、何かが流れていく感覚があった。あれは、召喚のための術式だったんだと思う」
先生は自分の掌を見つめながら、言葉を選ぶように続けた。
「召喚術式は、異世界から人を呼び寄せるための仕組み。だとしたら……理論上は、その流れを逆に回すことができれば」
「元の世界へ、送り返せるかもしれない」
零司が続きを引き取るように言った。先生は小さく頷いた。
「あくまで、私の中に流れ込んだ術式の記憶と、研究者としての勘よ。確証は、まだない」
念を押すように、先生はそう付け加えた。
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「でも、簡単じゃないと思う」
先生は続けた。
「召喚は、5つの神殿に蓄積された魔力を星冠の塔で統合して、初めて成立する規模のものだった。それを逆回転させるには……同じくらい、あるいはそれ以上の魔力が必要になるはず」
「王都の神殿1つじゃ、足りないってことですか」
澪が尋ねる。先生は頷いた。
「たぶん、5つすべての神殿を、同時に起動しなければ届かない」
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沈黙が落ちた。
5つの神殿は、どれも遠く離れた場所にある。ルーヴェ村も、その1つに含まれている。
「そんなの、どうやって……」
瑠奈が呟いた。
「私たち、追われてるんですよ」澪が続ける。「今更、村や街を回るなんて」
「移動だけで、何か月もかかるかもしれません」
楓が地図を思い描くように、視線を宙にさまよわせた。誰も、その先の答えを持っていなかった。
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先生は少しの間、黙っていた。それから、ためらいがちに口を開いた。
「もしかしたら……」
四人の視線が、一斉に先生へ向いた。
先生はそこで言葉を切った。何かを考え込むように、視線を落とす。まだ、自分の中でも整理がついていない様子だった。
「なんでもない。もう少し、考えさせて」
それだけ言うと、先生は口をつぐんだ。四人は顔を見合わせたまま、次の言葉を待つしかなかった。




