第90話 繋がっているという感覚
隠れ家での日々は、いつの間にか幾つもの夜を重ねていた。数えることはしなかったが、二人の間にあった最初のぎこちなさは、少しずつ形を変えていた。
その夜も、楓たちは何も言わずに席を外した。
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先生の声のかけ方も、視線の合わせ方も、以前とは違っていた。迷いがなくなったわけではない。それでも、そこに自然な柔らかさが混じるようになっていた。
短い会話を交わした後、灯りが落ちた。
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その瞬間、先生の身体が小さく強張った。
これまで感じたことのない温かさが、身体の奥から込み上げてくるような感覚だった。何かが胸の奥から溢れて、全身へと広がっていく。先生は小さく声を漏らし、それから、ふっと力が抜けた。
目尻に涙が滲んでいた。放心したような表情のまま、先生はしばらく動かなかった。
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零司は、それまでとは違う先生の反応に、何かが起きたことを肌で感じ取った。
言葉にはしないまま、視界の端に意識を向ける。
淡い光と共に、見慣れた表示が浮かんだ。
〈ハーレムメンバーに登録されました〉
数値の羅列がその下に続く。零司はしばらく、その文字を見つめていた。
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先生の呼吸は、まだ整っていなかった。うっすらと開いた目が、零司の方を向く。何が起きたのか、自分でもまだうまく言葉にできない様子だった。
「先生」
零司は静かに切り出した。「ハーレムメンバーに、なったみたいです」
先生は一瞬、目を見開いた。それから頬が赤く染まり、視線が泳いだ。
「そう、なの」
短い答えだったが、そこに驚きと、隠しきれない気恥ずかしさが滲んでいた。
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零司は自分のステータスを開き、先生に見えるように差し出した。体力魔力共有の欄に、新しい繋がりを示す表示が現れていた。
「これで、少しは……先生の力になれると思います」
先生はしばらくその表示を見つめ、それから小さく頷いた。
「本当に、繋がってるのね」
呟くような声だった。不安げな響きの奥に、それだけではない何かが混じっていた。
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先生は何も言わず、零司の手にそっと自分の手を重ねた。強く握るでもなく、ただ確かめるような仕草だった。
零司もその手を握り返した。
しばらくの間、二人は繋いだ手を見つめたまま、何も言わなかった。




