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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
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第85話 私が、決めたことよ

 物陰の中で、先生はどれだけの時間そうしていたか分からなくなっていた。膝の上の手を、ゆっくりと開く。それから、ふと顔を上げた。


 ⸻


 澪の言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。零司たちの様子。自分の身体に今も残る消耗。それらを1つずつ、改めてなぞり直す。

 教育者として、それはできない。あの時口にした言葉が、今の自分をもう納得させられないことに気づいていた。

 四人は、迷いながらも自分たちで選んで、ここまで進んできた。誰に強いられたのでもなく。その事実の重さが、先生の中で少しずつ形を変えていった。

 誰かに説得されたわけではない。澪の言葉がきっかけではあったけれど、最後にこの結論に辿り着いたのは、自分の頭でだった。


 ⸻


 意識が朦朧としていた頃、繰り返し浮かんでいた顔がもう一度よぎった。目立たなかったが、何かを考えているような目をしていた学生。

 あの学生が、今は皆を守ろうとしてここまで来ている。

 恐怖でも、抵抗でもない。静かな納得に近い何かが、胸の中に広がっていくのを、先生は感じていた。


 ⸻


 先生は立ち上がり、物陰から出た。

 四人がこちらを見た。誰も何も言わなかった。先生はゆっくりと歩み寄り、澪と目を合わせた。

「私が、決めたことよ」

 はっきりとした声だった。

 澪は何も言わず、ただ黙って頷いた。

 楓の表情がわずかに揺れた。安堵とも違う、何かを飲み込むような複雑な色が一瞬だけよぎり、視線がそっと逸れた。

 瑠奈は目を丸くして、「あ……」と気の抜けたような声を漏らした。それからすぐに、いつもの調子を取り戻そうとするように口元を緩めた。

 零司は何も言えなかった。先生と目が合ったまま、しばらく動けずにいた。


 ⸻


 先生は小さく目を伏せた。震えはまだ、指先にわずかに残っていた。それでも、そこに宿っているのは、迷いのない静かな覚悟だった。

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