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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第4章:「還る場所、還らないもの」
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第84話 手のひらを見つめ直す

 先生から少し離れた壁際で、零司は膝を抱えるようにして座っていた。握りしめていた拳を、ゆっくりと開く。爪の跡が、掌にうっすらと残っていた。


 ⸻


 なんで、これなんだよ。

 何度も繰り返してきた自嘲が、また頭の中で鳴った。ハーレム王。レベル譲渡。スキルポイント。これまで散々世話になってきた仕組みが、今、先生を巻き込む形で目の前に転がっている。

 楓が、澪が、瑠奈が、力になろうとしてくれたのは、誰に強いられたわけでもない。それは分かっている。分かっているつもりだった。それでも、自分の職業がなければ生まれなかった関係だということも、また事実だった。

 高校の頃、部屋の隅で読み耽っていたラノベの表紙が、脈絡もなく脳裏をよぎった。ハーレムものが好きだった。何度も同じような展開を読んでは、頁をめくる手を止められなかった。

 自分の職業と、あの頃好きだった物語が、重なって見える瞬間がある。その度に、喉の奥に苦いものが込み上げた。


 ⸻


 光の中で丸くなっていた先生の姿が、脳裏に焼き付いている。澪が治癒魔法をかけても、完全には戻らなかった顔色。

 このままでいいはずがない。それだけは、迷いようがなかった。

 けれど、自分がどうにかしなければ、という考え方は、どこか違う気がした。先生がどう決めるにしても、自分にできるのはその先にいることだけだ。そんな漠然とした思いだけが、胸の中に残っていた。

 嫌悪と、心配と、どうしようもなさが、整理のつかないまま同じ場所に居座っていた。


 ⸻


「零司」

 瑠奈の声だった。振り返ると、少し離れた場所からこちらを見ている。何か言いかけて、しかしそれ以上は言葉にせず、小さく首を傾げただけだった。

「大丈夫」

 短く答えると、瑠奈はそれ以上聞かず、先生の方へ視線を戻した。


 ⸻


 零司はもう一度、自分の掌を見下ろした。何かを握りしめるでもなく、ただそこにある手を、じっと見つめ直す。

 先生のいる物陰の方角を、一度だけ見やった。それから視線を落とし、また自分の手に戻した。

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