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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第1章:「灯火の村と、始まりの嘘」
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第07話 回想(その3)

 召喚されてから、数週間が経った頃。

 最初の混乱は少しずつ落ち着き始めていた。元の世界に帰れるのか。なぜ俺たちが呼ばれたのか。その疑問が消えたわけではない。それでも、毎日は進んでいく。

 朝起きる。食事をする。訓練をする。ダンジョンへ向かう。

 そんな生活が少しずつ当たり前になっていた。

 だが、俺には1つ気になることがあった。この世界について、まだほとんど何も知らない。神官たちから受けた説明は、あくまで必要最低限の情報だった。

 だから時間があると、図書館へ向かうようになった。

 神殿区画の外れにある大きな建物。扉を開けると、静かな空間が広がっていた。並んだ本棚。紙の匂い。異世界にも本は存在していた。

 不思議と落ち着く場所だった。元の世界でも、図書館は好きだった。一人で過ごせる。知らない知識を得られる。それだけで十分だった。

 本棚の間を歩く。歴史、魔法、魔物、地理。気になるものを手に取る。

 まず分かったこと。この世界には複数の国家が存在している。俺たちが召喚された聖王国ルクシアは、人間国家の中でも大きな勢力を持つ国らしい。神殿の影響が強く、魔法やダンジョンの研究も盛んに行われている。

 そして気になったことがある。

 レベル。スキル。職業。召喚者だけの特殊なものだと思っていた。しかし本を読む限り、この世界の人間も同じ仕組みを利用している。魔物を倒せば成長する。経験を積めば力になる。

 まるで誰かが設計したシステムみたいだ。

「……ゲームみたいだな」

 思わず呟く。

 またそんなことを考えてしまった。召喚された日にも思ったことだ。ゲームの制作者は異世界から帰ってきた人間なんじゃないか、と。馬鹿げた考えだと分かっている。ただ、そうでも考えないと説明つかない気がした。

 その後も、いくつかの本を読んだ。魔法の歴史。過去の戦争。そして英雄たちの物語。

 背表紙の擦れた一冊に、手が止まった。

 ページを開く。内容は、昔この世界を救った冒険者の話だった。仲間と共に旅をして、強大な魔物を倒して、世界を救った英雄。よくある英雄譚だった。

 そして最後。

 勇者は仲間たちと共に光の向こうへ旅立ち、世界を見守る神のもとへ還った。そう書かれていた。

 別の本も読んだ。英雄の結末は似ていた。世界を救った。魔王を倒した。最後は消えた。神になった。伝説になった。

 そんな話ばかりだった。

「……変じゃないか?」

 英雄になった人間が、その後どう生きたのか。その記録がほとんどない。世界を救った後、故郷へ帰った。家族を作った。小さな村で静かに暮らした。そんな話があってもいいはずだ。

 なのに残っているのは、いつも最後の旅立ちだけだった。

「英雄って、最後は消えるものなのか?」

 声が、思ったより静かに響いた。

 もちろん、ただの物語かもしれない。昔話なんて、そういうものだ。でも。

 本を閉じる。窓の外を見ると、夕方の光が差し込んでいた。

 レベル。スキル。職業。そして英雄たちの最後。全部が繋がっている気がする。

 俺は本を棚へ戻し、図書館を出た。

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