第77話 また会いましょう
零司は走った。
セリオンが何か言っていた。でも足は止まらなかった。澪が結界を展開してセリオンとの間に壁を作った。瑠奈が魔法で通路を照らした。楓がマッピングで最上階への道を確認した。
「上です」
四人は階段を駆け上がった。
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最上階の扉を開けた。
光がまだそこにあった。先生が光の中で丸くなっていた。
「先生」
楓が光の膜の前に膝をついた。
「もう一度だけ力を貸してください。内側から膜を弱めてもらえますか」
先生の目がゆっくりと開いた。
「……分かった」
かすかな声だった。でも確かだった。
光の膜が揺れ始めた。先生が内側から力を使っていた。
「楓ちゃん、どこ」
瑠奈が杖を構えながら聞いた。楓が鑑定を発動した。術式の構造が断片的に見えてきた。膜の一点が、他より薄くなっていた。
「そこです」
楓が指差した。瑠奈が杖を向けた。魔法が一点に収束した。
光の膜が、音もなく崩れた。
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先生が倒れかけた。
「先生っ」
楓と澪が同時に動いた。二人で先生を受け止めた。零司は扉の方を向いたままだった。
「零司くん、ケープを」
楓の声がした。零司は扉を向いたまま、背中に手を回してケープを外した。後ろへ差し出した。楓がそれを受け取って先生に羽織らせた。
「先生、歩けますか」
「……少し、待って」
先生の声は弱かった。でも意識はあった。澪が先生の腕を肩に回して支えた。
「行きましょう」
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五人で階段を降りた。途中の区画を通り過ぎようとしたとき、楓が扉を開けた。
「ここに何かあるかもしれません」
中は小さな控室だった。神官服が何着か掛けられていた。楓と澪が先生に神官服を着せた。零司は廊下で見張りをした。
「できました」
扉が開いた。先生が神官服を身につけて立っていた。ケープは楓の腕に戻っていた。
五人は再び走り出した。
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塔の出口が見えた。
セリオンが出口の前に立っていた。追いかけてこなかった。ただそこで待っていた。
「行くつもりですか」
「行きます」
零司が答えた。
セリオンは動かなかった。でも阻まなかった。五人が横を通り過ぎた。
外に出た瞬間、夜風が来た。
王都の空が広がっていた。星が出ていた。
零司は立ち止まって空を見上げた。先生が隣に立った。楓が、澪が、瑠奈が並んだ。
「また会いましょう」
後ろからセリオンの声がした。
零司は振り返らなかった。
これから何をすべきか、まだ分からなかった。でも覚悟だけは、胸の中にあった。




