第76話 変わりません
零司は一歩前に出た。
セリオンが零司を見た。管理者の目だった。感情がなかった。でも零司は目を逸らさなかった。
後ろに三人がいた。楓が、澪が、瑠奈がいた。
何を言えばいいか、考えた。
でも考える前に、いろいろなことが頭の中を流れた。
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ルーヴェ村のダンジョンで一人で潜っていた頃のこと。整いすぎた環境への違和感。図書館で英雄の記録を読んで、子孫の話が一切出てこないと気づいた時のこと。
楓が初めて声をかけてきた時のこと。澪が四人で行動しようと提案した時のこと。瑠奈が零司と呼んだ時のこと。
アルヴェナでの日々。四人での戦闘。野営の夜。食堂での会話。違和感が積み重なっていった日々。
蔵書室で楓と並んで本を読んだ時のこと。星脈という言葉と五芒星の図を見つけた時のこと。最後の一ピースが、ずっと見つからなかった時のこと。
星冠の塔の最上階で、光の中で丸くなっていた先生の姿。
あの巨大な空間に浮かんでいた、無数の光の球。上層には最近繋がれたばかりの者たち。下層へ行くほど身体が光に変わりかけていく者たち。
これだけのことを、見てきた。知ってしまった。
知らなかったことには、できなかった。
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「セリオンさんの言っていることは分かります」
零司は言った。
「星脈機関が止まれば魔法が失われる。魔道具が動かなくなる。人々の生活が崩壊する。世界を維持するために召喚者が必要だった。その論理は理解できます」
セリオンは黙って聞いていた。
「でも」
零司は続けた。
「俺たちは帰ります。先生を連れて、元の世界へ」
「それは不可能です」
セリオンが静かに言った。
「逆召喚の術式は存在しません。この世界から元の世界へ帰る方法は——」
「分かりません」
零司が遮った。
「方法が分からなくても、諦めません。先生なら分かるかもしれない。俺たちには分からなくても、先生には分かるかもしれない」
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セリオンは零司を見た。
長い沈黙があった。
「……あなたたちは、何度言っても変わりませんね」
「変わりません」
零司は答えた。
振り返った。楓が頷いた。澪が前を向いた。瑠奈が零司を見て、小さく頷いた。
答えは変わらなかった。
零司はセリオンに向き直った。
「先生を連れて、ここを出ます」




