第72話 決めるのは、俺たちだ
誰も話さなかった。
光の球が静かに浮かんでいた。上層から下層まで、無数の人たちが眠り続けていた。声もなく、動きもなく、ただ消費され続けていた。
零司はその光景を見ながら、頭の中でいろいろなことを思い返していた。
召喚された日のこと。ルーヴェ村のダンジョンで一人で潜っていたこと。楓が初めて声をかけてきたこと。澪が四人で行動しようと提案してきたこと。瑠奈が零司と呼んだこと。先生が光の中で丸くなっていたこと。
老いない体のこと。子供を残せないこと。記憶に空白があること。
全部が、ここに繋がっていた。
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楓が口を開いた。
「このまま、知らなかったことにはできません」
声が静かだった。でも揺れていなかった。
「証拠もある。先生もいる」
澪が続けた。
「動けるうちに動かないと」
瑠奈が零司を見た。
「零司と一緒にいる」
それだけだった。でもそれで十分だった。
零司は三人を見た。楓が真っ直ぐこちらを見ていた。澪が前を向いていた。瑠奈が零司から目を離さなかった。
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召喚された日から、ずっと言われた通りに動いてきた。ダンジョンへ潜れと言われて潜った。王都を目指せと言われて目指した。儀式へ参加しろと言われて向かった。
でも今は違う。
ここで何を選ぶかは、自分たちで決められる。
「決めるのは、俺たちだ」
零司が言った。
三人が頷いた。
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その瞬間、音が鳴り響いた。
低く、規則的な警報の音だった。施設全体に響いていた。壁の術式が一斉に赤く変わった。
監視が解けた。セリオンが気づいた。
「来た」
澪が言った。
「行こう」
零司が言った。
四人は走り出した。




