第71話 助けられないかもしれません
楓は光の球に向けて鑑定を発動した。
上層から始めた。1つ目の球。生命力の数値が返ってきた。低かった。でもまだあった。次の球。また次の球。上層の人たちはまだ生命力が残っていた。意識がないだけで、身体はまだ人の形をしていた。
下層へ目を向けた。
鑑定をかけた。数値が下がっていた。さらに下へ。また下がった。下層へ行くほど、生命力の数値が低くなっていった。楓の表情が少しずつ硬くなっていった。
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最下層に鑑定をかけた。
数値が返ってきた。
ほぼ、残っていなかった。
楓は画面を見つめたまま動けなかった。最下層の人たちは身体が淡く光に溶けかけていた。生命力がほぼゼロに近かった。もう死ぬ寸前だった。
手が震えた。
鑑定をかけ続けた。結果は変わらなかった。何度確認しても、同じだった。
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「上の方の人たちはまだ生命力が残っています」
楓は震える声で言った。
「でも下に行くほど……最下層の人たちは、もう……死ぬ寸前です」
澪が口を開いた。
「全員は……」
「……助けられないかもしれません」
言葉が落ちた。
誰も何も言わなかった。光の球が静かに浮かんでいた。誰も声を発しなかった。ただ静かに、消費され続けていた。
瑠奈が下層を見つめたまま動かなかった。澪が唇を噛んでいた。零司が光の球を見上げたまま黙っていた。
楓はもう一度最下層に鑑定をかけた。数値は変わらなかった。
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沈黙が続いた。
でも誰も動きを止めなかった。足が止まっていても、頭は動いていた。
零司が口を開いた。
「全員は助けられないかもしれない。でも」
続きを言わなかった。でも全員が聞いていた。
楓は零司を見た。零司はまだ光の球を見上げていた。何かを考えていた。その目が、ルーヴェ村にいた頃から変わらない、静かに物事を見る目だった。
次へ進まなければならなかった。
四人は前を向いた。




