第69話 最後の一ピースが、完全に埋まった
扉を開けた瞬間、空気が変わった。
広かった。広すぎた。天井が見えなかった。壁が見えなかった。扉の先は底が見えない巨大な吹き抜けになっていて、どこまで続いているのか分からなかった。
暗かった。でも暗くなかった。
無数の光が、空間の中に浮かんでいた。
球だった。大きさは人ひとりが入れるくらいの球が、数えることさえできないほどの数、宙に浮かんでいた。上の方から下の方まで、どこまでも続いていた。
四人は扉の前で立ち止まった。
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目が慣れてきた。
光の球の中に、人がいた。
零司は息を呑んだ。先生が光の中にいた場面が頭に浮かんだ。あの光の膜と、同じだった。膝を抱えて丸くなっている者、仰向けに眠っている者、それぞれの姿勢で、でも全員が目を閉じていた。声を発する者は一人もいなかった。
まるで先生と同じだった。
でも先生は一人だった。ここにいるのは、数えることさえできないほどの数だった。
「これ……全部、人ですか」
瑠奈が小声で言った。
誰も答えなかった。答えられなかった。
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「鑑定します」
楓が静かに言った。1つの光の球に向けてスキルを発動した。
少し間があった。
「冒険者……召喚された人たちです」
楓の声が低くなった。
「上の方はレベルが高いです。でも……下に行くほど、レベルが下がっています」
「どういうこと」
澪が楓を見た。
「最下層の人たちは……」
楓が言葉を止めた。
「楓」
零司が促した。
「身体が、光に変わりかけています」
静寂が落ちた。
楓の顔から血の気が引いていた。手が小さく震えていた。
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零司は接続室を見渡した。
上層には最近繋がれたばかりの者たちがいた。レベルが高く、身体はまだ人の形をしていた。でも下層へ行くほどレベルが下がり、最下層では身体が淡く光に溶けかけていた。
長い時間をかけて、消費されていく。
これが、星脈機関の正体だった。
召喚者は魔物を倒してレベルを上げ、王都へ向かい、儀式と称してここへ接続される。そして生命力と魔力を供給し続けながら、長い時間をかけて光になっていく。
最後の一ピースが、完全に埋まった。
澪が唇を噛んでいた。瑠奈が光の球を見上げたまま動けないでいた。楓がうつむいていた。
零司は何も言えなかった。
私たちも、いずれこうなるはずだった。
その言葉が、頭の中で静かに響いていた。




