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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
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第69話 最後の一ピースが、完全に埋まった

 扉を開けた瞬間、空気が変わった。

 広かった。広すぎた。天井が見えなかった。壁が見えなかった。扉の先は底が見えない巨大な吹き抜けになっていて、どこまで続いているのか分からなかった。

 暗かった。でも暗くなかった。

 無数の光が、空間の中に浮かんでいた。

 球だった。大きさは人ひとりが入れるくらいの球が、数えることさえできないほどの数、宙に浮かんでいた。上の方から下の方まで、どこまでも続いていた。

 四人は扉の前で立ち止まった。

 

 ⸻

 

 目が慣れてきた。

 光の球の中に、人がいた。

 零司は息を呑んだ。先生が光の中にいた場面が頭に浮かんだ。あの光の膜と、同じだった。膝を抱えて丸くなっている者、仰向けに眠っている者、それぞれの姿勢で、でも全員が目を閉じていた。声を発する者は一人もいなかった。

 まるで先生と同じだった。

 でも先生は一人だった。ここにいるのは、数えることさえできないほどの数だった。

「これ……全部、人ですか」

 瑠奈が小声で言った。

 誰も答えなかった。答えられなかった。

 

 ⸻

 

「鑑定します」

 楓が静かに言った。1つの光の球に向けてスキルを発動した。

 少し間があった。

「冒険者……召喚された人たちです」

 楓の声が低くなった。

「上の方はレベルが高いです。でも……下に行くほど、レベルが下がっています」

「どういうこと」

 澪が楓を見た。

「最下層の人たちは……」

 楓が言葉を止めた。

「楓」

 零司が促した。

「身体が、光に変わりかけています」

 静寂が落ちた。

 楓の顔から血の気が引いていた。手が小さく震えていた。

 

 ⸻

 

 零司は接続室を見渡した。

 上層には最近繋がれたばかりの者たちがいた。レベルが高く、身体はまだ人の形をしていた。でも下層へ行くほどレベルが下がり、最下層では身体が淡く光に溶けかけていた。

 長い時間をかけて、消費されていく。

 これが、星脈機関の正体だった。

 召喚者は魔物を倒してレベルを上げ、王都へ向かい、儀式と称してここへ接続される。そして生命力と魔力を供給し続けながら、長い時間をかけて光になっていく。

 最後の一ピースが、完全に埋まった。

 澪が唇を噛んでいた。瑠奈が光の球を見上げたまま動けないでいた。楓がうつむいていた。

 零司は何も言えなかった。

 私たちも、いずれこうなるはずだった。

 その言葉が、頭の中で静かに響いていた。

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