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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
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第67話 絶対に、帰るのよ

 零司は扉の方を向いたまま、先生の声を聞いていた。

 楓がもう一度鑑定を発動した。

「先生の状態、かなり深刻です。生命力も魔力も……かなり下がっています」

 澪が光の膜を見つめたまま言った。

「助け出す方法を考えないと」

「このままにはできない」

 零司が言った。

 誰も否定しなかった。

 

 ⸻

 

 楓が鑑定で術式の全容を把握しようとした。でも光が強すぎて、断片的な情報しか返ってこなかった。

「術式が複雑すぎて……全部は見えないです」

 瑠奈が杖を向けて魔力の流れを確認した。

「繋がりが多すぎる。どこを切ればいいか分からない」

 澪が結界を展開して術式を遮断しようとした。光の膜がわずかに揺れたが、すぐに元に戻った。

「効果がない」

 足音が下から聞こえてきた。追っ手が昇ってきていた。時間がなかった。

 零司は歯を食いしばった。方法が分からなかった。このまま動けないまま追い詰められるのか。

 

 ⸻

 

「……監視、だけなら」

 先生の声がした。

「先生?」

 零司が振り返った。

 先生の目が、さっきより少し開いていた。

「少しの間だけ……止められるかもしれない」

「どういうことですか」

 楓が先生に近づいた。

「ここを通る術式を……逆に使えば。監視の信号だけなら、少しの間、遮断できるかもしれない」

「でも先生の体が」

 楓の声が震えた。

「大丈夫」

 先生の声は穏やかだった。

「学生のためなら……それくらいは」

 

 ⸻

 

 誰も言葉を出さなかった。

 楓が先生の名前を呼ぼうとして、声が詰まった。目が潤んでいた。澪が唇を噛んでいた。瑠奈が零司を見た。

 零司は先生を見た。

 光の中で、先生は静かにこちらを見ていた。意識が保てているのか、保てていないのか、もう分からなかった。それでも目だけが、はっきりとこちらを向いていた。

 他に方法がなかった。

「……お願いします、先生」

 零司が言った。

 先生の口元が、かすかに緩んだ。

「行きなさい」

 少し間があった。

「絶対に、帰るのよ」

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