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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
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第65話 まだ、いる

 先生の唇がまた動いた。

 今度は少しだけ声になっていた。楓が光の膜の前に膝をついて、耳を傾けた。

「……かえ……」

「先生っ」

 楓が声を上げた。先生の目がゆっくりと動いた。焦点が定まらないまま、でも少しずつ何かを認識しようとしていた。

「先生、私たちです。一ノ瀬です」

 先生の目が留まった。

「……一ノ瀬……?」

「はい、一ノ瀬です。二階堂さんも三上さんもいます」

 先生の表情がかすかに変わった。眉が少し動いた。口元が緩んだ。

「……みんな、来たの」

 零司は扉の方を向いたまま、その声を聞いていた。

 

 ⸻

 

「先生、ここで何があったか教えてもらえますか」

 澪が静かに聞いた。

 先生はしばらく黙っていた。それから、途切れ途切れに話し始めた。

「何かが……私の中を通っていく感じがして……それを増やして、外に出していく……そんな感じが、ずっとあって」

「増幅、してるってことか」

 零司が扉の方を向いたまま言った。

「……多分。でも何のためなのかは、分からなくて」

 先生の声が途切れた。少し間があってから、また続いた。

「意識が、ほとんど保てなくて……どのくらい時間が経ったのかも、分からない」

 

 ⸻

 

「時々……体の中に何かが流れてきて」

 先生がまた話し始めた。

「それが外に出ていくと……どこかから、誰かが来る感じがして」

 楓が息を呑んだ。

「召喚……先生が召喚に使われていたんですか」

「……そうなのかも、しれない。術式が体の中に流れてくるたびに、何かを呼び寄せているんだって、感覚で分かって。でも止められなくて……抵抗しようとしても、意識が遠くなって」

 零司は扉を見つめたまま、先生の言葉を頭の中で整理した。

 召喚のたびに術式が先生の中を流れる。先生がそれを増幅して外へ出す。その力で召喚が行われる。

 捕らわれてから最初に儀式が行われた時のことが頭に浮かんだ。先生の体に光が流れ込んで、数倍になって出ていった。あの力で召喚が行われていたのか。

 先生は召喚システムの中核にいた。

 

 ⸻

 

 しばらく沈黙が続いた。

「みんな……怪我は、ない?」

 先生が聞いた。

 楓の目が潤んだ。

「大丈夫です、先生」

「そう……よかった」

 先生の声が少し安堵したように聞こえた。でもすぐにまた、意識が遠くなっていくようだった。目の焦点がぼやけ始めた。

「先生っ」

「……大丈夫。まだ、いる」

 かすかな声だった。でも確かにそこにいた。

 零司は扉を向いたまま、奥歯を噛んだ。

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