↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
65/68

第64話 手が届かなかった

 光が溢れていた。

 最上階は広かった。天井まで続く壁に術式が刻まれていて、全体が青白く光っていた。床には巨大な魔法陣が描かれていた。その中心に、光が浮かんでいた。

 楓は息を呑んだ。

 光の中に、人影があった。

 

 ⸻

 

 近づいた。

 一歩、また一歩。光が強くなるにつれて、人影の輪郭が見えてきた。

 膝を抱えて丸くなっていた。

 楓はその顔を見た瞬間、足が止まった。

 五十嵐先生だった。

 言葉が出なかった。召喚された日から、ずっと会いたかった。でも今目の前にいる先生は、楓が知っている先生とは何かが違った。細くなっていた。表情がなかった。意識があるのかどうかも分からなかった。

「先生っ」

 声をかけた。反応がなかった。

「五十嵐先生、聞こえますか」

 澪が続けた。先生の目がかすかに動いた。でも焦点が合っていなかった。

 

 ⸻

 

「九十九くん、外を見ていてください」

 楓は零司に向かって言った。

「……わかった」

 零司が扉の方を向いた。

 楓は先生に近づこうとした。手を伸ばした。でも光の膜に阻まれた。手のひらが透明な壁に当たるような感覚があって、それ以上入れなかった。

「触れない」

 澪も試みた。同じだった。瑠奈が杖を向けて術式を確認した。

「光が壁みたいになってる。中に入れない」

 楓は鑑定を発動した。先生の状態を確認しようとした。でも光が強すぎて、鑑定の結果がうまく返ってこなかった。断片的な情報だけが見えた。生命力、魔力、どちらも通常より大幅に低下していた。

 数値だけを見れば、ひどく衰弱しているとしか思えなかった。でも先生はここに閉じ込められているだけのはずだった。それなのになぜ、これほどまで力が失われているのか。楓にはその理由が分からなかった。

「先生の生命力が……かなり下がってます」

 楓の声が震えた。

 三人で光の膜を調べた。押しても、叩いても、瑠奈が魔法を当てても、びくともしなかった。中にいる先生には、手が届かなかった。

 

 ⸻

 

「先生っ、私たちです。楓です。聞こえますか」

 楓は光の膜の前で何度も呼びかけた。

 しばらくして、先生の唇がかすかに動いた。

 声は聞こえなかった。でも確かに動いていた。

「先生、今助けます」

 澪が静かに言った。

 先生の目がゆっくりと動いた。焦点が定まらないまま、でも誰かがいることには気づいているようだった。

「零司くん」

 楓が振り返らずに言った。

「なに」

「先生がいます。でも光の中にいて、触れられません」

 零司は扉の方を向いたまま答えた。

「分かった。どうにか方法を探そう」

 先生の唇がまたかすかに動いた。今度は少しだけ、声になりかけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。