第62話 それは——
広場を抜けて、神殿の裏手へ回り込んだ。
追っ手の気配が後ろから迫っていた。市民の目がある広場では神官たちも大きな術式は使えないようだったが、裏手へ入った瞬間に空気が変わった。
「楓、逃げ道は」
「マッピング展開中です。でも……どんどん奥へ追い込まれてます」
楓の声に焦りが滲んでいた。左へ曲がった。行き止まりだった。右へ戻った。神官たちの気配が近づいていた。
「地下へ行きましょう」
楓が階段を指差した。地上では逃げ場がなかった。四人は階段を駆け下りた。
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地下は地上とまるで違った。
石造りの無機質な通路が続いていた。魔法陣が壁に刻まれていて、青白い光を放っていた。天井が低く、空気が冷たかった。魔道具の明かりはなかった。壁の術式だけが光っていた。
「魔力の流れが……ここに集中してる」
瑠奈が壁を見ながら呟いた。
楓がマッピングを展開し続けた。地下の構造が少しずつ画面に現れてきた。通路が複雑に入り組んでいた。
「上から足音が聞こえます。降りてきてる」
澪が天井を見上げた。
四人は奥へ進んだ。通路を曲がるたびに、壁の魔法陣が密になっていった。魔力の濃さが増していった。
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行き止まりに出た。
正面に、大きな扉があった。扉の表面に術式が刻まれていて、淡く光っていた。押すと音もなく開いた。
中に、転送ゲートがあった。
ルーヴェ村やアルヴェナで見たものより、はるかに大きかった。床に描かれた巨大な魔法陣の中心に、光の柱が立っていた。
「これ……転送ゲートですよね」
楓が呟いた。
後ろから足音が近づいてきた。通路の向こうに光が見えた。神官たちが降りてきていた。
逃げ場がなかった。
零司は三人を見た。楓が零司を見た。澪が前を向いたまま頷いた。瑠奈が零司の手を一瞬だけ握った。
誰も言葉を出さなかった。
四人はゲートへ向かって走った。
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光が体を包んだ。
足元の感覚が消えた。浮いているのか落ちているのか分からない感覚が広がった。
その瞬間、零司の脳裏に何かが疼いた。
アルヴェナの蔵書室で楓と読んだ言葉が浮かんだ。
召喚者が力を蓄えることで、何かが維持される。
儀式の先で、先に進んだ者が戻ってこなかった。楓の行動予測が真っ白になった。術式の光が吸い込むように広がっていた。
維持される、何かが。
それは——
光が、すべてを塗り潰した。




