第59話 やっぱり、おかしい
ドアをノックする音がした。
「準備終わりましたか?そろそろ時間ですよ」
楓の声だった。わざわざ迎えに来てくれたらしい。零司は着替えを終えてドアを開けた。
楓の後ろに澪と瑠奈がいた。三人とも少し緊張した面持ちだった。
「行きましょうか」
楓が言った。零司は頷いた。
四人で大神殿へ向かった。王都の朝の通りは静かだった。行き交う人が少なかった。儀式のために、人が神殿の方へ集まっているのかもしれなかった。四人とも、ほとんど話さなかった。足音だけが石畳に響いた。
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大神殿の前に出た瞬間、空気が変わった。
これまで見てきたどの神殿とも違った。正面の広場には大勢の国民が集まっていた。花びらが舞っていた。どこかから荘厳な音楽が流れていた。香の煙が漂っていた。居並ぶ神官たちが整然と並んでいた。
歓声が上がった。英雄たちが来たという声が広場に広がった。
零司は歩きながら、頭の中で整理しようとした。これだけの演出が整っている。花びら、音楽、香、神官の配置。全部が計算されている気がした。この場の空気に呑まれたら、何も考えられなくなる。
そう思いながらも、足が止まらなかった。周囲の空気に引っ張られるように、大神殿の中へ入っていった。
呑まれかけている。
そう気づいた。
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大神殿の内部は広かった。天井が高く、柱が何本も並んでいた。床には大きな魔法陣が描かれていた。召喚者たちが一か所に集められて、神官から説明を受けた。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。これより光の神の祝福の儀式を執り行います。お一人ずつ祭壇へお進みください。光の神の祝福をお授けいたします」
一人ずつ、という言葉が頭に残った。
先頭の召喚者が神官に導かれて奥へ進んだ。しばらく待った。戻ってこなかった。次の召喚者が進んだ。また戻ってこなかった。
周囲の召喚者たちは気にしていない様子だった。順番を待ちながら、小声で話していた。
零司は奥を見た。祭壇の先は、扉で閉じられていた。
先に進んだ者が、戻ってこない。
最後の一ピースが、胸の中で疼いた。
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四人の順番が近づいてきた。
隣で瑠奈の表情が変わった。眉が少し寄って、目が細くなった。何かを感じ取っているようだった。
零司は瑠奈を見た。瑠奈は前を向いたまま、小さく呟いた。
「やっぱり、おかしい」
楓と澪も、それを聞いていた。




