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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
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第58話 明日は任せて

 夕食は四人で近くの食堂に入った。

 いつもと同じ店だった。いつもと同じ席に座った。でも何かが違った。

「明日、早いの?」

 瑠奈が聞いた。

「朝から神殿に集まるって言ってたわね」

 澪が答えた。

「そうですね……」

 楓が続けた。

「まあ、なんとかなるだろう」

 零司が言った。

 誰も続きを言わなかった。料理が運ばれてきて、四人は食べ始めた。会話はあった。でもどこかぎこちなかった。楓は普段より口数が少なかった。澪は静かに食事していた。瑠奈だけが少し明るく振る舞っていたが、目が笑っていなかった。

 明日の儀式について、誰も直接触れなかった。でも全員が意識していた。その空気だけが、テーブルの上にずっと漂っていた。

 

 ⸻

 

 夜、部屋の扉がノックされた。

 開けると瑠奈だった。宿屋の廊下に立っていた。テントの時とは違う、石造りの廊下だった。

「入れて」

 零司は部屋へ通した。瑠奈は部屋の真ん中に立って、少し黙っていた。いつもの明るさが、少し陰っていた。

「はっきりとは言えないんだけど」

 瑠奈が口を開いた。

「明日の儀式、何かある気がする。嫌な感じがずっとしてて」

「……うん」

「抜け駆けみたいで澪ちゃんと楓ちゃんには悪いんだけど」

 そう言って、零司に抱きついてきた。

 小さな体だった。腕の中にすっぽり収まった。

 

 ⸻

 

 ふわふわした感覚に、全身が包まれた。

 温かかった。零司の腕の中で、瑠奈は丸くなっていた。しばらくそのままでいると、突然瑠奈が変な声を上げた。

「ハーレムメンバーになった。ようやく」

 顔を上げた瑠奈の目が、少し潤んでいた。

「……よかったな」

「うん、よかった」

 瑠奈はしばらく零司の胸に顔を埋めていた。それから顔を上げて、笑った。

「明日は任せて」

 笑顔だった。でもその奥に、さっきの不安さがまだ残っていた。

 瑠奈は起き上がって、部屋を出ていった。扉が閉まった。

 

 ⸻

 

 一人になった。

 天井を見ながら、零司は考えた。

 なぜ三人がこんなにしてくれるのか。ずっと不思議だった。少し前に取ったスキルのせいだろうか。なんか全体的に能力が上昇するスキルだったけど、人間力が上がるとかそういうものなのか。

 まぁ、そんなことはないか。

 儀式の後はどうなるのだろう。次はどこへ行くのか。王都の先に何があるのか。そもそも、いつか元の世界へ戻ることになるのか。

 元の世界へ戻ったら、どうなるのだろう。

 三人はどうするのか。自分はどうするのか。

 答えが出なかった。目を閉じた。

 部屋の外から、王都の夜の静けさが伝わってきた。

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