第57話 集まってる感じ
朝から街へ出た。
王都の商業区は広かった。道の両側に店が並んで、行き交う人の流れが途切れなかった。魔道具の明かりが昼間でも灯っていて、給水設備が至る所に設置されていた。
瑠奈は歩きながら、街を観察した。
魔道具の密度が、ルーヴェ村やアルヴェナとは比べものにならなかった。街全体に魔力が満ちているような感覚があった。豊かだった。でもこれだけの魔力が、どこから来るのかという疑問が浮かんだ。
ルーヴェ村からアルヴェナ、そして王都。来るたびに魔道具の密度が上がって、魔力の濃さが増していた。
絶対何か作られたルールで動いている。その確信が、また浮かんできた。
⸻
神殿の広場へ向かった。
広場に近づくにつれて、何かが変わった。
魔力の流れが、他の場所と違った。商業区では街全体に均一に広がっていた魔力が、神殿の方向へ向かって流れていた。目には見えない。でも感じた。肌に触れる空気が、わずかに違った。
神殿の前に立って、床を見た。石畳の継ぎ目に、うっすらと何かが刻まれていた。魔法陣の一部のような模様だった。普通に歩いていたら気づかなかった。
儀式の準備をしている神官たちが行き来していた。その動きを目で追いながら、瑠奈は考えた。
これまで感じてきた違和感の中で、今感じているものが一番強かった。ルーヴェ村のダンジョンに似た感覚だった。あそこも、何かが集まっていた。
⸻
広場を離れて歩いていると、前から零司が来た。
「零司」
声をかけると、零司が顔を上げた。
「瑠奈、一人か」
「うん。零司も?」
「俺も」
二人で並んで歩いた。
「零司、神殿の周りって魔力の流れが違うと思わない?」
「どういう感じに?」
「なんか……集まってる感じ。ルーヴェ村のダンジョンに似てる気がする」
零司が少し黙った。
「……そうか」
「儀式、なんか嫌な感じがする」
「……うん」
零司も同じことを感じているようだった。でも二人とも、それ以上の言葉が出てこなかった。
歩きながら、瑠奈はそっと零司の手を取った。
「こうしてると落ち着く」
零司がその手をしっかり握り返した。二人はそのまま、しばらく黙って歩いた。
⸻
零司と別れて、一人で神殿を振り返った。
白い建物が青空の中に聳えていた。その下に、魔力が集まっていた。作られたルールがここに集約されている気がした。
儀式の当日、何かが分かるかもしれない。
でもそれが何なのか、まだ言葉にならなかった。瑠奈は神殿を見上げたまま、しばらくその場に立っていた。




