第54話 全部が、整いすぎていた
城門は大きかった。
アルヴェナの門とは比べものにならなかった。石造りの巨大な壁が左右に伸びていて、衛兵が等間隔に並んでいた。門をくぐる人の流れが途切れることなく続いていた。荷馬車、商人、旅人、兵士。ありとあらゆる人間が行き交っていた。
「すごい、人が多い」
瑠奈が辺りを見渡しながら言った。
「魔道具の数が全然違いますね」
楓が街並みを見ながら言った。照明、給水、輸送。至る所に魔道具が使われていた。アルヴェナよりさらに豊かな街だった。
「神殿はあっちかしら」
澪が中心部の方向を見た。遠くに、ひときわ高く聳える建物が見えた。
零司は歩きながら、街の構造を頭に入れた。城門から神殿への大通り、左右に広がる商業区、奥に続く居住区。魔道デバイスの地図と照らし合わせながら、出口と逃げ道を確認した。
癖になっていた。
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王都大神殿は、これまで見てきたどの神殿とも違った。
正面の階段だけでアルヴェナの神殿ほどの広さがあった。白い石造りの柱が何本も並んでいて、上部には精緻な彫刻が施されていた。神殿の前には広場が広がっていて、参拝者が絶えず行き来していた。
四人が近づくと、神官が出迎えた。
「お待ちしておりました」
到着をすでに把握していた。零司は少し眉を寄せたが、何も言わなかった。
神官が神殿の内部へ案内しながら告げた。
「皆さんの到着を市民へお知らせしてもよろしいでしょうか。英雄の方々をお迎えすることは、王都の民にとって大きな喜びでございます」
断る理由が見つからなかった。
しばらくして、広場の方から歓声が聞こえてきた。
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神殿の外へ出ると、広場に人が集まっていた。
英雄が来た。その言葉が人から人へ伝わって、どんどん人が増えていった。歓声と拍手が波のように広がった。花を投げてくる者、涙を流している老人、子供たちが手を振っていた。
零司は愛想笑いを作った。隣で澪が静かに頭を下げていた。楓が少し戸惑った様子で周囲を見渡していた。瑠奈だけが素直に手を振り返していた。
英雄。
その言葉が、妙に重かった。
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神殿の中へ戻ると、先に到着していた顔見知りの召喚者たちがいた。
「二階堂さんたちも来たんですね。私たちは三日前に着きました」
見知った顔の女子が声をかけてきた。高校時代のクラスメイトだった。
「儀式はもうすぐだって。私たちのグループはあと二、三人来たら揃うらしい」
「儀式ってどんな内容なんですか」
楓が聞いた。
「詳しくは教えてもらえないんだけど、光の神の祝福を授かる儀式らしくて、参加した先輩召喚者たちの話では、すごく厳かな雰囲気だったって」
参加した先輩召喚者たちの話。零司は引っかかった。参加した後の話を聞けるなら、消えていないということか。それとも別の儀式の話なのか。
確かめる方法がなかった。
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神官から儀式の説明を受けた。
「光の神の祝福を授かる神聖な儀式です。皆さんの長い旅の労をねぎらい、王国が感謝を示す場でもあります」
「儀式の内容は」
「神聖な儀式のため、事前の詳細説明は控えさせていただいております。当日の流れに沿ってご参加いただければ」
零司は黙って頷いた。
宿屋へ向かう道で、零司は頭の中で整理した。到着をすでに把握していた。歓迎が整いすぎていた。儀式の詳細は教えてもらえない。先に到着した召喚者たちは儀式を楽しみにしていた。
全部が、整いすぎていた。
宿屋の部屋に入って扉を閉めた。
外から歓声がかすかに聞こえた。英雄という言葉が、また頭の中で響いた。




