↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第3章:「星冠の塔にて」
54/61

第53話 最後の一ピースが、あそこにある気がした

 街道は広かった。

 アルヴェナを出てから、しばらく経っていた。王都への道は整備されていて、荷馬車がすれ違えるほどの幅があった。街道沿いには小さな村や農地が続いていて、遠くに山の稜線が見えた。

 四人で並んで歩いた。討伐依頼をこなしながら、少しずつ進んでいた。

 魔道デバイスの地図を開いた。現在地と王都の位置を確認した。まだ距離があった。

 

 ⸻

 

 楓は歩きながら、小さな本を開いていた。蔵書室で手に入れた文献の写しだった。ページをめくる指が慣れていた。ときどき立ち止まって何かを書き留めてから、また歩き始めた。

 零司と目が合った瞬間、楓は少し微笑んだ。零司も頷いた。

 澪は常に周囲を確認しながら歩いていた。街道の両側、草むらの動き、遠くの木立。視線が止まることなく動いていた。でも野営の夜、食事の後に焚き火を見つめている時だけ、表情がわずかに緩んだ。

 瑠奈は道端の植物や虫に目を留めながら歩いていた。この葉の形はルーヴェ村では見なかった、この花はアルヴェナにもあった、と独り言のように呟いていた。

「この世界の植物って、魔力を含んでいるのかな」

 独り言だったが、零司の耳に届いた。答えは返さなかった。でもその問いが、頭の隅に残った。

 

 ⸻

 

 ある夜、三人が寝静まってから、零司は一人でテントを出た。

 空が広かった。星が多かった。この世界の星空は、元の世界のそれより少し明るい気がした。

 地面に腰を下ろして、空を見上げた。

 召喚者が力を蓄えることで、何かが維持される。アルヴェナの蔵書室で楓と読んだ文献の言葉が、また浮かんできた。何が維持されるのか。その答えだけが、ずっと出てこなかった。

 村の配置、魔力の回収、英雄が消えること、記憶の空白、安全管理機構の非対称性。全部が繋がりそうで、でも最後の一ピースだけが見つからなかった。

 王都へ行けば分かるかもしれない。

 でも知りたくなかったことを知ることになるかもしれない。

 焚き火の残り火が、かすかに揺れていた。

 

 ⸻

 

 数日後、街道の先に何かが見えた。

「見て、あれが王都?」

 瑠奈が指差した。

 地平線の向こうに、巨大な城壁の輪郭が浮かんでいた。これまで見てきたどの街とも違う規模だった。城壁の内側に、大きな建物がいくつも重なって見えた。その中心に、ひときわ高く聳える建物があった。

「大きいですね……」

 楓が息を吸いながら言った。

「いよいよね」

 澪が前を向いたまま言った。

「……そうだね」

 零司は答えた。

 三人の顔を見た。瑠奈は目を輝かせていた。楓は少し緊張した様子だった。澪は表情を引き締めていた。

 零司は前を向いた。王都の輪郭が、少しずつ大きくなっていた。

 最後の一ピースが、あそこにある気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。