第53話 最後の一ピースが、あそこにある気がした
街道は広かった。
アルヴェナを出てから、しばらく経っていた。王都への道は整備されていて、荷馬車がすれ違えるほどの幅があった。街道沿いには小さな村や農地が続いていて、遠くに山の稜線が見えた。
四人で並んで歩いた。討伐依頼をこなしながら、少しずつ進んでいた。
魔道デバイスの地図を開いた。現在地と王都の位置を確認した。まだ距離があった。
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楓は歩きながら、小さな本を開いていた。蔵書室で手に入れた文献の写しだった。ページをめくる指が慣れていた。ときどき立ち止まって何かを書き留めてから、また歩き始めた。
零司と目が合った瞬間、楓は少し微笑んだ。零司も頷いた。
澪は常に周囲を確認しながら歩いていた。街道の両側、草むらの動き、遠くの木立。視線が止まることなく動いていた。でも野営の夜、食事の後に焚き火を見つめている時だけ、表情がわずかに緩んだ。
瑠奈は道端の植物や虫に目を留めながら歩いていた。この葉の形はルーヴェ村では見なかった、この花はアルヴェナにもあった、と独り言のように呟いていた。
「この世界の植物って、魔力を含んでいるのかな」
独り言だったが、零司の耳に届いた。答えは返さなかった。でもその問いが、頭の隅に残った。
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ある夜、三人が寝静まってから、零司は一人でテントを出た。
空が広かった。星が多かった。この世界の星空は、元の世界のそれより少し明るい気がした。
地面に腰を下ろして、空を見上げた。
召喚者が力を蓄えることで、何かが維持される。アルヴェナの蔵書室で楓と読んだ文献の言葉が、また浮かんできた。何が維持されるのか。その答えだけが、ずっと出てこなかった。
村の配置、魔力の回収、英雄が消えること、記憶の空白、安全管理機構の非対称性。全部が繋がりそうで、でも最後の一ピースだけが見つからなかった。
王都へ行けば分かるかもしれない。
でも知りたくなかったことを知ることになるかもしれない。
焚き火の残り火が、かすかに揺れていた。
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数日後、街道の先に何かが見えた。
「見て、あれが王都?」
瑠奈が指差した。
地平線の向こうに、巨大な城壁の輪郭が浮かんでいた。これまで見てきたどの街とも違う規模だった。城壁の内側に、大きな建物がいくつも重なって見えた。その中心に、ひときわ高く聳える建物があった。
「大きいですね……」
楓が息を吸いながら言った。
「いよいよね」
澪が前を向いたまま言った。
「……そうだね」
零司は答えた。
三人の顔を見た。瑠奈は目を輝かせていた。楓は少し緊張した様子だった。澪は表情を引き締めていた。
零司は前を向いた。王都の輪郭が、少しずつ大きくなっていた。
最後の一ピースが、あそこにある気がした。




