第52話 どちらにしても、行くしかなかった
ふと魔道デバイスのカレンダーを開いた。
季節の象徴が、春の芽吹きになっていた。
アルヴェナに来た頃も、春の芽吹きだった。冬の眠りを経て、また同じ場所へ戻ってきた。一周していた。
それだけの時間が経っていた。
街の景色は見慣れたものになっていた。商業区の道順も、神殿への近道も、よく行く店の場所も、全部頭に入っていた。四人での連携も、最初の頃とは比べものにならないくらい噛み合うようになっていた。
でも自分たちの外見は、何も変わっていなかった。
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いつもの食堂へ四人で入った。
席に着いて注文をしていると、奥から子供の声がした。よちよちと歩いてくる小さな子供が、テーブルの端を掴んでこちらを見上げていた。
店主が顔を出した。
「もうこんなに大きくなって、最近やっと言葉が出てきたんですよ」
「かわいい」
瑠奈が顔をほころばせた。楓も澪も笑顔で子供を見ていた。
零司も笑顔を作った。でも頭の中では別のことを考えていた。
アルヴェナに来た頃、この子はまだ生まれたばかりだった。抱っこされていた赤ちゃんが、今では片言で話している。
あの子は成長している。
でも俺たちは。
子供が店主の方へ戻っていった。食堂の喧騒が戻ってきた。零司は料理に視線を落とした。
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食堂を出て、四人で通りを歩いた。
楓が前を向いたまま言った。
「そろそろ次へ向かいますか」
「ここにも随分慣れたわね」
澪が街を見渡しながら言った。
「王都どんなところかな」
瑠奈が少し弾んだ声で言った。
「……そうだね」
零司は答えた。三人の顔を見た。前を向いていた。迷いがなかった。
零司も前を向いた。でも胸の中には、最後の一ピースがまだ見つからないままの問いが残っていた。
王都へ行けば、分かるかもしれない。
あるいは、知りたくなかったことを知ることになるかもしれない。
どちらにしても、行くしかなかった。
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星冠の塔の最上階は、今日も静かだった。
セリオンは魔導炉の前に立って、中を覗き込んだ。魔力がなみなみと満ちていた。
壁の五芒星に視線を移した。5つの頂点のうち、1つに目を留めた。
「そろそろ次へ向かってもらいましょうか」
誰もいない部屋で、セリオンは静かに呟いた。
光の中で、五十嵐理香がただ丸くなっていた。




