第51話 最後の一ピース
棚の奥から楓が古い文献を引き出した。
表紙は色褪せていて、文字がかすれていた。ページをめくっていた楓の手が止まった。
「零司くん、これ見てください」
差し出されたページに、見慣れない図が描かれていた。5つの点を線で結んだ、星の形だった。その横に、見慣れない言葉が並んでいた。
星脈。
「前に蔵書室で見かけた言葉ですね」
楓が静かに言った。零司は頷いた。二人で文献を読み解き始めた。
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難解だった。古い言葉で書かれていて、全部は分からなかった。でも断片的に読み取れることがあった。
「星脈というのは大地に流れる力のことみたいです。それがここに書いてある5つの施設を通じて循環していると」
楓が丁寧に読み解きながら伝えてくれた。
「5つの施設……」
「召喚者が力を蓄えることで何かが維持されるとも書いてあります。何が維持されるのかまでは読み取れないですけど」
零司は文献を見つめたまま、黙っていた。
召喚者が力を蓄えることで、何かが維持される。
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頭の中で、これまでの違和感が動き始めた。
ルーヴェ村と、アルヴェナと、他の街の配置。地図で確認したことがあった。五芒星の形になっていた。
魔物を倒すと、魔力が神殿へ回収される。
英雄たちは王都へ行った後、記録が途切れる。子孫の話も出てこない。
記憶に空白がある。何かあったはずなのに、原因が出てこない。
安全管理機構は召喚者を守るのではなく、縛るために機能している。
そして今、召喚者が力を蓄えることで何かが維持されるという言葉。
全部が一本の線で繋がりそうだった。でも最後の一ピースだけが、見つからなかった。何かが維持される。それが何なのかが分からなかった。
その一ピースさえ分かれば、全部が繋がる気がした。
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「もう少し調べれば分かるかもしれません」
楓が文献を見ながら言った。
「……そうだね」
答えながら、零司は別のことを考えていた。
知りたいという気持ちはあった。ずっと引っかかっていたことが、ようやく形になりつつある。もう少しで全部が見えそうだという感覚があった。
でも同時に、知ることへの恐怖もあった。
知ったとして、どうすればいいのか。この世界で、召喚者として生きながら、真実を知ったとして、何ができるのか。
「零司くん、どうしたんですか」
楓が顔を上げてこちらを見ていた。
「いや、何でもない」
文献を閉じた。
楓はもう一度文献を見てから、静かに棚へ戻した。
蔵書室の中は静かだった。他に誰もいなかった。二人分の息遣いだけが、古い本の匂いの中に溶けていた。




