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星脈のほとりで、俺たちは気づいた  作者: pokupi
第2章:「星渡りの街に満ちる違和感」
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第50話 誰かが常に見ていて、調整している

 ダンジョンの通路を歩きながら、零司は考えていた。

 召喚されてすぐの頃から、ずっと引っかかっていたことがあった。待遇が良すぎる。

 召喚された日から、住む場所が用意されていた。食事も与えられた。装備も支給された。ルーヴェ村でも、アルヴェナでも、何不自由なく生活できる環境が整っていた。

 でもその代わりに、魔物を倒し続けることを求められた。

 魔物を倒すと、魔力が神殿へ回収される。それはいつからか気づいていた。与えられるものと求められるものが、きれいに対応していた。まるで取引のようだった。

 なぜ魔力を回収する必要があるのか。誰が、何のために。

 

 ⸻

 

 英雄の話を思い出した。

 昨日蔵書室で確認したことだった。歴代の英雄たちの功績は詳細に記されているのに、王都へ行った後の記録がない。子孫の話も出てこない。英雄たちは王都へ行った後、どうなったのか。

 召喚者同士の争いが起きないのは安全管理機構のせいだった。でもなぜそこまでして争いを防ぐ必要があるのか。

 以前二階堂が言っていた言葉が頭に浮かんだ。

 守るためではなく、縛るため。

 召喚者が互いに傷つけ合うことを防ぐのではなく、召喚者が何かをしようとすることを防いでいるのではないか。争いを防ぐことで、召喚者たちを管理しやすい状態に保っているのではないか。

 

 ⸻

 

 ふと、以前ダンジョンで魔物に囲まれて危うかったことを思い出した。

 でもなぜ囲まれたのか、原因が出てこなかった。何かあったはずなのに、そこだけがぽっかり抜けていた。

 似たような感覚が以前にもあった気がした。消えた召喚者の噂を聞いた気がする。でも詳細が出てこない。いつのことだったか、誰から聞いたのかも分からなかった。

 こういう空白が、何度かあった。

 思い出せないのではなく、思い出せない何かがあるという感覚だけが残っている。その感覚自体は消えていない。でも中身が出てこない。

 偶然ではない気がした。

 意図的に作られた空白なのではないか。

 このシステムは自動ではない。どこかで誰かが常に見ていて、調整している。召喚者が知ってはいけないことを、知る前に消している。

 その考えが浮かんだ瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 

 ⸻

 

 ダンジョンを出て、四人で近くの食堂へ入った。

 楓が今日のダンジョンの話をしていた。澪が相槌を打って、瑠奈が笑った。いつもと同じ、賑やかな食事だった。

 零司は料理に視線を落としたまま、相槌だけを返した。

 三人を見た。笑顔だった。この真実を知ったとき、三人はどう思うだろうか。

 でも今は言えなかった。証明できない。確かめる方法がない。

 普通に振る舞った。笑顔の三人に合わせて、何でもない顔をした。

 料理の温かさが手のひらに伝わってきた。でも誰かが見ているという感覚が、どこかに残ったままだった。

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