第04話 一ノ瀬楓(その3)
夕方になり、ダンジョンを出た。
出口付近で、見慣れた人影が目に入る。
九十九くんだった。
高校時代のクラスメイト。同じ図書委員だったけれど、話したことは数えるほどしかない。大学でも同じ学部に進学し、五十嵐先生の講義も一緒に受けていた。だけど相変わらず、あまり人とは関わろうとしない人だった。
そんな九十九くんが、一人でダンジョンから出てくる。
この世界では珍しいことではない。それなのに、足が少しだけ止まった。
声を掛けようか迷う。でも結局、背中を見送るだけだった。
⸻
居住区へ戻る途中だった。
夕暮れに染まる石畳の道。討伐帰りの学生たちが行き交っている。
その中で、また彼を見つけた。
九十九くん。今度も一人だった。
なんとなく。本当に、なんとなく。
気づいた時には、鑑定を発動していた。
視界に半透明の文字が浮かび上がる。
九十九零司
レベル:9
職業:ハーレム王
状態:正常
アクティブスキル:なし
パッシブスキル:高速成長
職業特性:
『女性と関係を持つことでスキルポイントを獲得する』
まず目に飛び込んできたのはレベルだった。
9。
思わず数字を見直す。私たちがようやく5に到達したばかりだというのに、その差は大きかった。
だけど能力値を確認すると、首を傾げた。確かに私より高い。でも澪さんのような突出した力もなく、瑠奈さんのような圧倒的な魔力もない。レベル9という数字に見合う強さには見えなかった。
そしてもう1つ。
アクティブスキル欄が空白だった。
レベル9なら、普通はいくつものスキルを取得しているはずだ。なのに何もない。あるのはパッシブスキルの『高速成長』だけ。
視線が、職業特性の欄へ滑った。
『女性と関係を持つことでスキルポイントを獲得する』
———
頬に熱が集まるのが分かった。
慌てて視線を逸らす。思考を打ち切ろうとする。でも文字だけが視界に焼きついて離れない。
鑑定を解除した。
九十九くんに気づかれないよう、早足でその場を離れる。石畳を踏む足音が、自分でも少しおかしいと思うくらい速かった。
本人に知られたら、きっと嫌われる。それ以前に、勝手に見てしまったことが申し訳なかった。
だけど。
『女性と関係を持つことでスキルポイントを獲得する』
———いったい、どういう意味なんだろう。




