第45話 真似してみたの
今日は休日だった。
二階堂の提案で、久しぶりに何もない一日になった。最近色々あったような気がする。ゆっくりするのにちょうど良かった。
朝起きて何をしようか考えていたら、魔道デバイスにメッセージが届いた。
「今日予定なかったら神殿の蔵書室行きませんか」
一ノ瀬からだった。九十九はすぐに返事を送った。
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蔵書室の入口で一ノ瀬と合流した。
「ここは変わった本が多いんですよ。九十九くんは来るの初めてでしたっけ」
「そうだな。そういえば前に星脈だっけ、読んだって話してたよね。俺も読んでみようかな」
棚を眺めながら何冊か手に取った。大昔に……とか、魔力が……とか、難解な内容だった。それでも何かが引っかかって、ページをめくり続けた。
数時間経った頃、一ノ瀬が声をかけてきた。
「そろそろ出ましょうか」
「そうだな」
蔵書室を出ながら一ノ瀬が聞いた。
「何か気になる本ありました?」
「星脈って、なんなんだろうな……」
うまく言葉にできなかった。でもすごく気になった。
これからどうしようかと声をかけようとしたとき、一ノ瀬が先に言った。
「ちょっと用事があるので、これで」
神殿前で別れた。一ノ瀬の後ろ姿を少し見てから、商店街へ向かった。
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お昼を食べようと歩いていると、着信があった。二階堂だった。
「九十九くん、その、一人なら一緒にお昼食べない……」
ちょうどよかった。待ち合わせのお店へ向かうと、二階堂がすでに店の前で待っていた。
店内は明るく清潔で、女の子らしいチョイスだなと思った。パンとメインを注文して、向かい合って食べた。
「こうして二人で食事なんて初めてだね」
「そ、そうかしら……」
なぜか目が泳いで、顔が赤くなっていた。九十九には理由が分からなかった。
食事しながら、最近感じる違和感の話になった。
「何かおかしいとは思ってるけど、調べられるなら調べた方がいいかも」
「そうだな。言われてることをこなしながら、何か考えないとな」
小一時間話して、店を出た。二階堂は用事があると言って別れた。
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商店街を歩いていると、後ろから声がした。
「零司」
三上だった。買い物に来たらしい。暇なら付き合えと言われて、一緒に歩くことになった。
最初の頃のぎこちなさはもうなかった。気づいたら手を繋いで歩いていた。こうしていると安心するらしかった。明るく振る舞う三上も、異世界では不安なのだろう。
雑貨屋で三上が青い石のついたペンダントを手に取った。しばらく眺めて、また棚に戻した。また手に取った。
「気に入ったの?」
「……うん、でも」
「買ってあげるよ」
三上の顔がぱっと明るくなった。会計を済ませて、三上はすぐに胸にかけた。ニコニコしながら歩いた。嬉しそうで良かった。
ずいぶん時間も経ったので帰ることにした。商店街を抜けると、見知った人影が2つあった。
一ノ瀬と二階堂だった。
「瑠奈さんだけずるい」
一ノ瀬がちょっと怒っていた。
「公衆の面前で手を繋いで……」
二階堂が顔を赤くしていた。すでに手を繋ぐ以上のことをしているのに、面白いと思った。
「どうしたんだ」
九十九には状況が分からなかった。
「今日一日どうでしたか?三人とデートできて楽しかったですか」
一ノ瀬がそう言った瞬間、九十九は急に顔が熱くなった。
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もう夕方だったので、四人で近くの店に入った。
席についてすぐ、一ノ瀬が少し恥ずかしそうに言った。
「私も名前で呼んでいいですか。……零司くん」
「れ、零司」
二階堂も続けた。声が少し裏返っていた。
「私達も名前で呼んでよ」
三上が言った。
九十九は少し間を置いた。
「……楓……澪……瑠奈」
三人ともニコニコしていた。
落ち着いた頃、一ノ瀬が話し始めた。
「高校の時、零司くんよくライトノベル読んでたよね。一度何読んでるか聞いたら、タイトルは見せてもらえたけど内容は恥ずかしがって教えてくれなかった」
「……そうだっけ」
「気になって買って読んでみたの。女の子がたくさん出てきて、全員と仲良くなる話で」
一ノ瀬はニコニコしながら続けた。
「その中に、一日で全員とデートする話があったの。覚えてたから、真似してみたの」
九十九は固まった。
そうだ。ここに来てから忘れていたけれど、俺はハーレム物ラノベが好きだった。
まさか俺の職業って、ここから来てるのか。
三人がニコニコこちらを見ていた。九十九は何も言えなかった。




