第43話 何かあった気がした
ダンジョンの入口で、男子学生たちとすれ違った。
向こうが先に気づいた。九十九たちを一瞥して、鼻で笑った。
「なんだよ、ハーレムかよ」
九十九は内心で思った。ハーレム王だもん。
隣で一ノ瀬と二階堂が同時に顔を赤くした。三上もハーレムという言葉に反応して頬を染めた。それぞれが別々の理由で赤くなっているのを、九十九だけが知っていた。
男子学生たちはその様子を見て、面白くなさそうに舌打ちした。そのままどこかへ行ってしまった。
「ここ、入るのやめようか」
「さすがに2回も転送させられてるんだから、もうないでしょ」
二階堂がそう言ってダンジョンへ入った。
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今日も順調に進んでいた。
新たな魔物たちと対峙し始めたとき、後ろの方から騒がしい足音が聞こえてきた。何だと思って振り返ると、男子学生たちがこちらへ向かって走ってきた。その後ろに、魔物の群れが続いていた。
あっという間に混戦になった。
男子学生たちは笑いながらこちらを通り抜けた。後から来た魔物が、矛先をこちらへ向けてきた。
「九十九はそのままやられてしまえ。委員長たちは俺らが助けてあげるから」
離れた場所で男子学生たちが笑っていた。
このままでは持たない。そう思った瞬間、二階堂が叫んだ。
「皆、私の側に来て」
三人が二階堂の側へ集まった。二階堂が結界の魔法を展開した。淡い光の膜が四人を包んだ。
「少ししか持たないけど……攻撃はできなくなる」
魔物が結界に阻まれた。次の瞬間、魔物の群れが一気に男子学生たちへ向かった。
男子学生たちが慌てた。笑い声が悲鳴に変わった。その場から逃げ出そうとした。
「逃げるな、挟み撃ちにして魔物を倒せ」
九十九が叫んだ。でも聞こえていなかった。男子学生たちはパニックになって通路を走った。
四人は追いかけた。
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案の定、通路の先で新たな魔物と鉢合わせていた。前後から挟まれた男子学生たちは、もう逃げ場がなかった。
「助けなきゃ」
四人は魔物へ向かった。半分倒したところで、男子学生たちが次々と倒れていった。残りの魔物が一気に襲いかかってきた。
全ての魔物を倒し終わった。
「間に合わなかったのか」
九十九はその場に立ったまま、床に倒れた男子学生たちを見ていた。
「だめ、効果がない」
二階堂が治癒の魔法を使いながら、震えた声で言った。
一ノ瀬が顔を背けた。三上も視線を逸らした。
「彼ら、どうすればいいのかしら」
二階堂の声が少し震えていた。
「さすがにこのままでは」
九十九が答えかけたとき、男子学生たちが薄く光り始めた。
光はゆっくりと広がって、やがて霧のように散っていった。跡形もなくなった。石畳だけが残った。
「え、何。転送?じゃないね。安全管理機構の時とも違う」
二階堂が呟いた。
九十九は男子学生たちがいた場所を見つめていた。何も言えなかった。
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今日はもう帰ることにした。
四人は無言でダンジョンを出た。そのまま街まで無言で歩いた。足音だけが石畳に続いた。
九十九はいろいろなことを考えていた。光になって消えた男子学生たちのこと。あの光は何だったのか。召喚者が死ぬとどうなるのか。この世界の仕組みに、また何かが引っかかった。
でも街に着く頃には、衝撃的な出来事があったはずなのに、それが何だったのかをうまく思い出せなくなっていた。
九十九は立ち止まって、振り返った。
ダンジョンの方向を見た。
何かあった気がした。でも何だったか、分からなかった。




