第42話 なぜかほっとするのだった
二階堂は焦っていた。
最近のことを考えていたら、気づいたら魔物に囲まれていた。一瞬の隙を突かれて、四人が分断された。
幸いなことに楓が隣にいた。マッピングがあるから道は分かる。一旦上の階への階段まで戻ることにした。
「瑠奈たちは無事に戻れるかな。探しに行った方がいいかな」
「無闇に動き回らない方が……しばらく待ってから探しに行った方がいいのでは」
楓がそう言ってから、腰のポーチを見た。そこに下がった小さな猫のぬいぐるみを外して、壁にかけた。隣に矢印を書いた。
「ここに近づいたら分かるように、分かれ道のところにかけておきましょう。きっと瑠奈さんなら気づくはず」
二階堂は頷いた。
瑠奈……九十九くん……どうか無事で。
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「しまった、分断された。三上さんこっち」
九十九は三上の手を取って後退した。不用意に走ると別の魔物に遭遇する。慎重に下がりながら魔物の攻撃を受け流した。すかさず三上が魔法で反撃した。そんなやり取りを何度か繰り返して、ようやく落ち着いた。
「とりあえず上の階への階段を目指すか」
「うん……わかった」
「多分こっちかな」
「あの……ちょっと痛い」
「あっ、ごめん」
無意識に手を握り続けていたようだった。慌てて手を離した。
今までこんなこと自然にできなかったのに、なぜだろう。そんなことを考えていると、
「離さなくていい、握っててくれると落ち着く」
九十九は少し戸惑いながらも、また手を繋いだ。
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二人は手を繋いだまま、慎重にダンジョンを進んだ。途中何度か魔物に遭遇したが、問題なく倒した。
四方への注意を怠らないようにしながら話していると、だんだんと三上の口数が増えてきた。最初は短い返事だけだったのに、気づけば魔法の話や、ダンジョンの構造への疑問や、澪ちゃんのウサギのぬいぐるみが心配といった話が続くようになっていた。
分かれ道に差しかかったとき、三上が何かに気づいて壁に近寄った。
「これ澪ちゃんのウサギ」
左右の耳の長さが違う小さなウサギのぬいぐるみが壁にかかっていた。隣に矢印が書いてあった。
「間違えない、こっちだ」
三上はウサギを手に取って先へ進んだ。表情が明るくなっていた。
しばらく進むと、また分かれ道に差しかかった。
「楓ちゃんの猫」
壁に小さな猫のぬいぐるみがかかっていた。三上のテンションが一気に上がった。
「二人とももう近くにいるはず」
二人とも大丈夫だろうか。そう考えていると、三上が手を引いた。
「早く、急ぐよ、零司」
今にも飛んでいきそうな勢いだった。
九十九は一瞬固まった。
いきなり名前呼び捨てかよ。
小走りで通路を進んだ。警戒は怠らなかった。すると前の方から、何かが争う音がした。
「澪ちゃん達戦ってる」
通路を曲がると、一ノ瀬と二階堂が階段前で魔物と戦っていた。三上がすかさず火の魔法を放った。
「澪ちゃん、楓ちゃん、来たよ」
魔物を挟み撃ちにして、全部倒した。
「これ役に立ったよ」
三上が二人にぬいぐるみを渡した。
「役に立ってよかった」
一ノ瀬が笑った。
「瑠奈、何もなかったか、大丈夫か」
「零司が助けてくれたから大丈夫」
一ノ瀬と二階堂が同時に声を上げた。
「零司!!」
「いきなり名前呼びなんて……」
二階堂が目を丸くした。三上は得意そうな顔をした。
「零司は私の初めての男だから……」
ぽっと頬を染めた。
「は、初めて!!」
一ノ瀬と二階堂の声が重なった。
「私だって九十九くんが初めて……」
一ノ瀬が顔を赤くしてぶつぶつ言った。
「ダンジョンの中で初めてなんて……」
二階堂が脳がキャパオーバーした様子でぶつぶつ言っていた。
三上は言っていることを理解しているのか、二人を楽しそうに見ていた。
とにかく、無事に合流できた。
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後日、初めてとは手を繋いだことだと知って、一ノ瀬と二階堂はなぜかほっとするのだった。




