第35話 守っているのか、縛っているのか
商業区の門を出たところで、後ろから声がかかった。
「あ、委員長たちじゃん」
振り返った。見覚えのある顔だった。ルーヴェ村のダンジョンで絡んできた男子学生たちだった。
「この前はごめんね。あんなことになるとは思わなくて」
口では謝っていた。でも顔はニヤニヤしたままだった。
「私たち三人で行くから」
二階堂が前を向いたまま答えて、歩き続けた。楓と瑠奈もそれに続いた。
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男子学生たちもついてきた。
「ここの魔物強くなって俺達困ってるんだよね」
全く困った様子はなかった。視線が楓に向いていた。
「一ノ瀬ちゃん、俺達も助けてよ。九十九ばっかりじゃなくて俺達にも優しくしてよ」
距離が縮まってきた。楓はルーヴェ村での出来事が頭をよぎった。あの時と同じだった。足が一歩後退りした。顔から血の気が引いていくのが分かった。
男の手が伸びてきた。
光が弾けた。
男子学生たちが消えた。
楓はしばらくその場に立ったまま、息を整えた。胸に手を当てた。心臓がまだ速かった。
「またここでも発動するのね」
二階堂が静かに言った。
「しつこいよね、あの人たち」
瑠奈が吐き捨てるように言った。
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三人はそのまま歩き続けた。少しの間、誰も何も言わなかった。
二階堂が楓の方を見た。
「楓は九十九くんと仲いいの?同じ学部だし、高校の時も同じ委員会だったよね」
「そんなのじゃ……ただ九十九くんはいつも一人だから」
二階堂は少し考えるような間を置いた。
「なら、いっそのこと九十九くんも一緒に行動するのはどう?変に絡まれることもなくなると思うし、悪い人じゃないしね」
瑠奈が振り返った。
「楓ちゃんの友達なら大丈夫」
「友達じゃ……」
「なら決まりね」
二階堂が遮った。
「楓、九十九くんに連絡してね」
「うん……わかった」
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楓は魔道デバイスを取り出した。握ったまま、しばらく動けなかった。
一緒に行動する。それはいいことのはずだった。でも何かが胸の奥に引っかかっていた。何がと聞かれても、うまく答えられなかった。
デバイスの画面を開いた。九十九の連絡先を出した。また止まった。
文字を打ち始めた。
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楓が連絡を打ち始めるのを横目で見ながら、二階堂は別のことを考えていた。
安全管理機構。召喚者同士の争いができない。村人に危害を加えられない。それは分かっていた。でも今日の場面を思い返すと、引っかかるものがあった。
もし拘束されそうになっても、反撃できないのではないか。
安全のためという名目で、別の目的があるのではないか。
守っているのか、縛っているのか。
ダンジョンの入口が見えてきた。二階堂は前を向いた。今はそれ以上考えないようにした。




