第34話 私たちは、何なのだろう
ダンジョンから帰って、三上瑠奈は部屋の鏡の前に立った。
いつもと同じ顔だった。金髪ソバージュが帽子の跡でわずかに乱れていた。それだけだった。
召喚されてから、かなりの月日が経っていた。
変わっていない。
顔つきも、体型も、召喚された日とほとんど同じだった。これだけ毎日ダンジョンに潜って、魔物と戦い続けているのに。普通なら鍛えれば体つきが変わるはずだった。筋肉がついたり、顔が引き締まったり、そういう変化があるはずだった。
何もなかった。
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着替えながら、考えた。
レベルが上がると力がつく。それは間違いなかった。魔法の射程が伸びて、威力が上がって、連発しても魔力が続くようになった。でもそれって何なのだろう。筋肉がついたように見えない。体が大きくなったわけでもない。
魔力は目に見えないものだから、見た目に変化が出ないのかもしれない。そう考えれば説明はつく。
でも髪はどうだ。
ルーヴェ村にいる頃に澪が気づいていた。召喚されてから髪が伸びていない。爪も同じだった。切れば短くなる。でもある長さから先には伸びない。召喚された時の長さに戻るだけだ。
これは再生? それとも維持?
生理現象は起きている。食事も必要だし、眠くもなる。代謝は働いている。なのに体の形だけが変わらない。
肉体が、一定の状態を維持しているのではないか。
何かが、そうさせているのではないか。
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夕食の後、三人で宿屋の食事処に残っていた。
「ねえ、私たちって体つき変わらなくない?ずっと戦ってるのに」
澪と楓が顔を上げた。
「言われてみれば……まあそういうものじゃない?」
澪があっさり答えた。
「髪も爪も伸びないですしね」
楓が少し考えてから言った。
「それって変じゃない?普通鍛えたら体変わるじゃん」
「変といえば変だけど、今更じゃない」
澪はそう言ってお茶を飲んだ。楓も特に深くは追わなかった。
瑠奈は二人を見た。二人とも、それ以上考えるつもりはない様子だった。
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部屋に戻って、瑠奈は手のひらを見た。
魔法を撃つ時はここから力が出る感覚がある。でもこの手のひらは召喚された日から何も変わっていない。同じ大きさで、同じ形で、同じ皮膚だった。
一体何なのだろう。
私たちは、何なのだろう。
答えは出なかった。でも考えることをやめられなかった。手のひらをただ見つめたまま、部屋の明かりだけが白く灯っていた。




